日本の個人投資家が、グローバル化する時代 マネックスグループ 松本大 会長兼社長CEOに聞く

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――アメリカ株の取引量も伸び悩んでいます。アメリカの子会社の業績は厳しい。市場の風向きは、決して順風ではない。

その通りです。2008年のリーマンショックに続いてMFグローバルの破綻があり、あるいは、様々なネガティブイベントが発生しました。その結果として、アメリカ人のなかにあった、「株式に対する熱意」が冷えてしまっている。アメリカだけではない。この数年間、世界の株式型ファンドからのドレイン(流出)は、腰を抜かすほど巨額です。この5年間で何百兆円という規模で資金が抜けてしまった。しかも、ステディに、です。

これは、単に市場規制強化の影響という話ではありません。アメリカ人のマインドが株式で資産を増やすということから離れて、市場のアンカーとなる投資家層が減少してしまっている。企業の業績は良いので株価は上がっていても、それは限られた株主の間でチェンジング・ハンドしているだけのことです。

そうしたなかでは、経営は厳しい。が、さすがにここがボトムでしょう。去年の今頃の日本もかなり暗かったでしょう。アメリカもこれから良くなってくる。とにかく、厳しい環境がある程度続いても、経営哲学、経営方針などを変えずに生き延びることがとても大切です。そのためには、コストをきちんと抑制して、ビジネスを変更せずに済むようにする。いずれ波が来れば、先に向かうことはできる。

――フロントランナーが前進するには逆風はつき物ということでしょうか。

数年前、新聞広告を連続で出したことがあります。半ば意見広告のようなものでした。毎回文章を書き換えました。じつは、その一つも「ヨットは逆風で進む」(笑)。私にはそういう気持ちが昔からある。マネックスの前に働いていたときも、かなりイノーベイティブな企業の中ですら、私はつねに異端でした。でも、「ふりむくな ふりむくな 後ろには夢がない」(寺山修二詩『さらば ハイセイコー』)ですよ。

ただし、百戦錬磨とまではいかないけれども、数多く闘ってきたので、我々なりに緻密な計算のうえでやっている。グローバルビジョンも5年分のコストカットのスケジュールを公表しています。多年度の計画のなかでコストを公表している証券会社は当社以外にはありません。システム開発を通じてコスト削減し、グローバルな商品供給力を向上していく。これは、他社とはまったく次元が異なる挑戦です。頑張っていきます。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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