日本の個人投資家が、グローバル化する時代 マネックスグループ 松本大 会長兼社長CEOに聞く

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とはいえ、そのときになっても、顧客が大量に米国株や中国株などを売買するわけではない。日本の株式に売買の比率が片寄ることが想像できる。したがって、自前による良質なサービス提供ではオーバークオリティになりかねない。しかし、その逆に、中途半端なサービス内容では、最先端のサービスを知っているインターネットビジネスの顧客は、「それならば、インターネットで直接、アメリカの企業を探して口座を開設すればいい」と去ってしまう。

つまり、一流の品質の提供と、多大な出費という問題をいかに解決するか。ならば、アメリカや中国の会社をグループ化してしまおう、となったわけです。

それぞれの企業がそれぞれの地域で競争力のあるサービスを提供しているので、それを相互供給することによって、最終的には世界の顧客に世界のプロダクトを提供できるグローバル・プラットフォームを作れるのではないかとね。

コマンディング・ハイツで風を感じる必要性 

これに比べると、もう一つの理由は、より概念的です。コマンディング・ハイツ(指揮官は高台で戦況を把握する)がないといけない、と。私たちはテクノロジーを駆使したファイナンスを業としています。いわゆるFINTECHと呼ばれる領域にある。そのメッカはやはり、アメリカです。いまは世界のどこにいても、インターネットを使って情報を取れる。しかし、コマンディング・ハイツに立たないと、どういうものが動きはじめているのかという風を感じられない。そこで、11年6月にアメリカのオンライン証券、トレードステーションを買収しました。

――しかし、確固たる路線であっても、その実現スケジュールは遅れがちです。

日本において、日本の金融機関がアメリカの子会社、グループ企業をもってして、日本の個人向け金融サービスのシステムを開発し、きちんと形になった前例はない。未知の領域でした。アメリカのグループ会社であるトレードステーションがシステムを構築し、コンプライアンスなど日本のルールにマッチさせていく過程では、想定外の課題にも取り組まなければならなかった。したがって、時間もかかった。これからも当初の想定よりも時間がかかる。ざっくりとした言い方では、当初想定よりも2割ほど時間がかかっている。3年もしくは4年で完了させる予定だったが、5年はかかる。そんなイメージです。

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