10月25日上場、JR九州の課題と拡大戦略 鉄道事業の赤字を脱却しても経営課題は山積
上場後は株価で全国のライバルと対決することになる。JR東日本には首都圏、JR東海には東海道新幹線というドル箱があるが、JR九州にそのような打ち出の小槌は存在しない。近畿圏と山陽・北陸新幹線のバランスをとりながら、多角化事業で企業を成長させてきたJR西日本が当面のお手本となりそうだ。また、九州のもう一方の盟主、西日本鉄道とも今後は株価で比較されるようになる。西鉄はインバウンド利用の増加などで運輸事業が大きく増えたことや不動産事業の好調といった要因で、2016年3月期は過去最高純益を更新している。
JR九州と西鉄の2017年3月期の業績予想を比較してみよう。売上高はJR九州が3788億円、西鉄が3602億円とほぼ互角。利益面ではJR九州が382億円、西鉄が97億円でJR九州がリードしている。
熊本地震の影響は小さくない
JR九州の業績予想は同社が8月9日に発表したもので、熊本地震の影響を織り込んでいる。地震の影響額は90億円の減収と復旧費用85億円の計175億円。分譲マンション販売収入の増加やJRJP博多ビルの開業、鉄道事業の減価償却費の減少などにより増収増益を達成できるという。とはいえ、その後の大雨被害もあり、損失額が膨らむ可能性は否定しきれない。
2014年4月に上場した西武ホールディングスも株式上場の先輩格という点で、JR九州のライバルといえるかもしれない。2017年3月期の業績予想は、売上高5142億円、当期純利益295億円となっている。
9月15日、都内で会見した同社の後藤高志社長は、JR九州の上場に対して「地方は少子高齢化が進み鉄道が伸び悩む中、観光など他のビジネスを積極的に進めてきたご努力の賜物。九州新幹線全通の前日に東日本大震災が発生し、今年は熊本地震で被災する中で上場にこぎつけた。同業として、そしてJR九州と同様に厳しい環境から上場した人間として、心からおめでとうと申し上げたい」と述べている。
今後、JR九州は西鉄、JR、全国のライバルと株式市場で渡り合うことになり、鉄道事業とはまったく違ったかじ取りが求められることになる。
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