「九州新幹線」来春の徐行解除には何が必要か 熊本地震で得た脱線対策の教訓を生かすには
4月に発生した熊本地震で、一時的に全線運休という状況に追い込まれた九州新幹線。全線復旧後も暫定ダイヤが続いていたが、ついに7月4日よりダイヤの方も「ほぼ全面復旧」となった。新大阪発着の『みずほ』『さくら』もほぼ正常通り、また九州区間の『つばめ』の座席指定も再開されている。
だが、当面は「熊本~熊本総合車両所」間の一部に70キロ制限の区間が残るため、平常ダイヤ+6分程度の遅れが続くことになる。これは、同区間で回送列車の脱線が発生したために、軌道の修正作業が残っているからだ。事故箇所の軌道に関しては、大きな損傷はなく短期間で復旧ができたわけだが、徐行運転を解除できるのかというと、一旦ズレた軌道を修復するのに大きな手間がかかる。
実際に高速運転を行うまでには、レーザー光線をあてて軌道の歪みを測定し、厳密な修正を施さねばならない。だが、事故区間も含めて朝の6時から24時までは営業運転が再開されている中では深夜に作業するしかなく、実際に工事が可能なのは一日3時間程度であるという。
これに加えて、脱線事故区間は「脱線防止ガード」の設置対象とはなっていなかったため、今回の地震で活断層が明らかになった以上は、このガード設置が急務となっている。この設置作業も、毎晩3時間という時間しか与えられていない中で進めるしかない。
地震への備えはこれで十分?
というわけで、この2つの作業が完工するまでは、徐行運転は解除できず「6分遅れ」という状況は続くことになる。JR九州鉄道事業本部新幹線部の兵藤公顕部長によれば、徐行の解除ができるのは、作業の進捗にもよるが2016年度一杯、つまり2017年3月まではかかる見通しだという。
では、これで傷んだ軌道が修正され、危険箇所には「脱線防止ガード」が設置されれば九州新幹線は問題なく平常ダイヤに戻って良いのだろうか?回送列車とはいえ、全車両が脱線という事故を経験した中で、九州新幹線としての対策は十分なのだろうか?
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