TPPは米国の「善意喪失」を如実に示している

ヒラリー政権誕生でも市場開放は望み薄

9月26日の第1回テレビ討論会で、共和党のドナルド・トランプ候補と初めて直接対決する民主党のヒラリー・クリントン候補 (写真: ロイター/Brian Snyder)

第2次世界大戦後に米国は世界で「善意の覇権(Benign Hegemon)」を握ってきたとされる。戦前の欧州の植民地帝国や旧ソ連、中国とは違うという考え方だ。

たとえば米国は自国市場を開放し、他国の繁栄を手助けしてきた。だが今日、こうした通商の面で米国の覇権から善意が薄まってきている。これに伴い、米国の影響力も低下するかもしれない。

オバマ米大統領は「環太平洋経済連携協定(TPP)によって、米国が21世紀の道路交通ルールを起草できる」と語った。しかし米国は事実上、自ら描いた通商協定から去ろうとしているのだ。

自己中心的姿勢を強める米国

米メリーランド大学の研究者が調べたところでは、TPPの文章の半分近くは、過去に米国が結んだ自由貿易協定(FTA)の数々から複製されたもので、この比率はほかのどの国よりも高いという。それなのに米国は、他国から譲歩をもぎ取ったほどには、自国市場を開放しなかった。

また米国国際貿易委員会(ITC)の報告書によると、TPP発効の効果は2032年の米国の輸入を2%程度押し上げるにとどまるという。輸入増加分は国内総生産(GDP)比で0.2%にすぎない。

米国が自国を最優先する姿勢を強めてきた。たとえば、共和党が優勢な米下院は米国の製薬会社やタバコ会社を満足させるためだけに交渉を実質的に再開する姿勢を示したのだが、これに対してTPPの相手国の数々が激怒しているのは、まったく無理からぬことだ。

そして、民主党が11月の選挙で民主党が上院での過半数を取り戻せば、異なった要求をするだろう。議会の会派のどちらが、TPP交渉に参加している他の11カ国の怒りをなだめることになるのだろうか?

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