なぜカープは24年も優勝できなかったのか 黒田も新井も・・広島を苦しめた「2つの制度」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

大きな要因は1993年に同時導入された「FA制度」と「ドラフト逆指名制度」(のちに自由獲得枠制度、希望入団枠制度と名称を変え、2006年を最後に廃止)にあった。

観客動員が伸び悩み、資金力に乏しい地方球団にとってFA制度は一方通行。権利を行使して出ていく選手は引き留められないし、他球団から手を挙げた選手には手を出せない。現在まで一人も獲っていない。

国内FAでは川口和久(1994年、巨人)を皮切りに江藤智(1999年、同)、金本知憲(2002年、阪神)、新井(2007年、同)、大竹寛(2014年、巨人)、木村昇吾(2015年、西武)の6人が去り、海外FAでは黒田(2007年、ドジャース)、高橋建(2008年、ブルージェイズ)の2人が出ていった。さらにポスティングシステムで前田健太(2015年、ドジャース)がいなくなった。

風向きが変わったのは2007年の制度改正だった

やっと育てたエースや4番にこれだけ出て行かれては、豊富な資金力をバックに補強を続ける球団に対抗するのは困難だ。苦難の時期が続く。ようやく風向きが変わってきたのは2007年だ。ドラフト候補選手への裏金問題が発覚したことを受けて、希望入団枠を廃止。従来の入札制度に戻った。

さらに2009年のマツダスタジアム開場。近鉄消滅に端を発した球界再編騒動で揺れた2004年11月、球団存続に危機感を抱いた地元が老朽化した旧広島市民球場に代わる新球場建設を目指して樽募金を実施。1億2600万円を集めて広島市を動かし、新市民球場建設にこぎつけた。

米国のボールパークにならって遊び心にあふれ、さらに選手に優しい内外野総天然芝の新球場は、初年度に前年比35%増の187万3046人の観衆を集めた。昨年は211万0266人と初の大台に乗せ、入場料収入は約54億円まで伸びたという。

200万人超えの大きな力になったのは、言うまでもない。メジャーの年俸20億円オファーを蹴って4億円で戻ってきた「男気」の黒田と阪神を自由契約になった新井の復帰である。

両ベテランが一方的な戦力流出の流れを食い止め、2007年以降のドラフトで入って来た若手と融合。黒田はマウンドで菊池、田中の声がけを促し、新井はいじられ役を受け入れた。

戻ってきた投打の柱と伸び盛りの若手、カープ女子をはじめとするスタンドの盛り上がりが三位一体となって実現した「2度目の初優勝」。敵地での胴上げとなったが、クライマックス・シリーズのファイナルステージは10月12日からマツダスタジアムで行われる。日本シリーズ切符を手にして地元のファンと思い切り盛り上がればいい。

永瀬 郷太郎 スポーツニッポン新聞社特別編集委員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながせ ごうたろう

1955年、岡山市生まれ。早稲田大学卒。1980年、スポーツニッポン新聞東京本社入社。1982年からプロ野球担当になり、巨人、西武の番記者を歴任。2001年から編集委員。2005年に「ドキュメント パ・リーグ発」、2006年は「ボールパークを行く」などの連載記事を手掛ける。共著に『たかが江川されど江川』(新潮社)がある。野球殿堂競技者表彰委員会代表幹事。
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事