ホンダ、儲からない「NSX」を復活させる理由 約10年ぶりの復活、スーパーカーの役目は?

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新型NSXのリアスタイル(撮影:尾形 文繁)

その後、2008年のリーマンショックで業績は急悪化、2009年にはF1からも撤退する。さらに2011年の東日本大震災、タイ大洪水と試練は続いた。開発陣の士気を高めるプロジェクトは影を潜めた。

業績回復の兆しが見えた2012年、ホンダは「2016年度に世界販売600万台以上を目指す」と宣言。重点市場の北米だけでなく、急成長する新興国に合わせた、生活の足となる車の開発に注力した。

だが、軽トラックとスポーツカーから4輪事業が始まったホンダにとって、こうした車は復活の象徴とはなりえなかった。このままでは開発陣の挑戦の場が失われてしまう。危機感を抱いた伊東孝紳前社長はスポーツカーの開発再開を決断したのだった。

販売台数や収益では評価できない?

華々しい復活を遂げたNSXだが、課題も多い。本田技術研究所の和田範秋主任研究員は「(フレームに採用した鋳造部品など)研究所で成熟してきた最高峰の技術が世に出せる」と誇るが、NSXで実用化された技術は高コスト。価格の制約がある量販車への応用は現実的ではない。

販売面でもホンダはNSXによってブランド全体が向上することを狙っている。が、北米や中国を中心に展開する高級ブランド「アキュラ」の育成ならまだしも、フィットや軽自動車といった普段使いの車種の販売に、どれだけ貢献できるかは未知数だ。

新型NSXは販売台数や収益性では評価できない難しさがある。プロジェクトの成果を判断するには、しばらく時間がかかりそうだ。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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