マザー・テレサの「黒い噂」を追う男の言い分 なぜ平和と慈愛の象徴を批判するのか

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1997年にマザー・テレサが死亡してからは、神の愛の宣教者会が運営する施設は衛生面により注意を払うようになったと、チャタージーも言う。彼によれば、注射針を使いまわすこともしなくなったという。

チャタージーが自らの主張の正当性を示し、施設の改善を求めて長年努力する中で、地元コルカタの人々が自分に背を向けていると感じるようになったと彼は言う。

人々がマザー・テレサを擁護するのは、彼女が1979年にノーベル平和賞を受賞したことが要因だとチャタージーは考えている。「コルカタの人々はノーベル賞に対するあこがれがある」と彼は言う。それ以外の人たちは、ただ声高に彼女を批判することを恐れているのだとチャタージーは述べた。

しかし、欧米のローマ・カトリック教会におけるマザー・テレサの立場だけでも、一部のインド国民が彼女をもてはやす理由としては十分だとチャタージーは言う。「欧米社会が彼女をすばらしい人物だと言えば、そうに違いないとされる」

欧米社会が求めるセンセーショナリズム

自らの調査について、欧米社会ではよりセンセーショナルな内容が求められると、チャタージーは言う。

「彼らは第三世界のとある都市の威厳や名声が1人のアルバニア人修道女によって損なわれたかどうかは気にもとめない」と、チャタージーは言う。「彼らが興味を持っているのはうそやインチキ、詐欺の話で、全体像には関心がない」

マザー・テレサが聖人になったら彼女に対する追及をやめるのかと尋ねると、チャタージーは、記録を正す旅は続けると語った。

「私の中でこの件に終わりはない。なぜなら神話は続き、問題は続くからだ」とチャタージーは言う。「だから私も逃げ出さない」

(執筆:Kai Schult記者、翻訳:中丸碧)

(C) The New York Times News Serives

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