キヤノン、タイ工場のいま 大洪水から1年半、現地トップを直撃

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2011年10月に発生したタイの大洪水は、現地に生産拠点を持つ日本企業に多大な被害をもたらした。あれから1年半――。タイ国内では別地域に新工場を設立し生産を移管したカシオ計算機やソニー、洪水で被災した工場を復旧させたニコン、HOYAなど、被害の状況などによって、進出企業の取り組みはさまざまだ。
このうちキヤノンは、洪水で被災したハイテク工場を復旧させつつ、東北部のラチャシマ新工場での生産も本格化させている。一方で、タイではインラック政権が打ち出した最低賃金引き上げが1月から実施されるなど、人件費上昇という新たな懸念も出ている。洪水からの復旧や今後の課題などについて、キヤノンハイテクタイランドの北村和広社長に聞いた。

――タイにおけるキヤノンの生産体制は。

タイで現在稼働しているインクジェットプリンタ(IJP)工場は2つあります。一つは1991年12月に設立され、タイ洪水の被害を受けたアユタヤ地域のハイテク工業団地にあるハイテク工場。もう一つは11年11月に設立されたタイ東北部のナコンラチャシマ地域にあるラチャシマ工場です。

両工場でIJPを生産し、レムチャバン港から輸出をしています。熟練作業員が多いハイテク工場で主に難易度の高いプロ向け大型モデルを、ラチャシマ工場では一般向けモデルを中心に生産しています。

洪水時は幸いにも別工場の立ち上げが進んでいた

――11年に起きた洪水を振り返ると。

11年10月3日にアユタヤ地域の道路が浸水し、従業員の欠勤が増えて一部生産ラインが停止しました。6日には洪水状況が悪化したため、会社をクローズして重要部品、治工具等の2階などへの避難作業を開始しました。そして、13日には工場が浸水したのです。

洪水が起きた10月は日本向けのIJPの生産がピークの時期でした。しかし、幸いにも別地域にあるラチャシマ新工場の立ち上げが進んでいたタイミングで、生産準備に入っていました。そこで本社の販売と密に連絡をとって優先すべき生産品目を決め、急遽日本向けの主力製品の生産をラチャシマ工場で立ち上げることを決定しました。そして、沈んでしまった金型を引き上げる作業から始めました。

11月21日にはラチャシマ工場で生産を開始。12月19日にはハイテク工場でも一部の生産を再開し、翌12年2月にはすべての機種の生産を再開することができました。

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