「日銀総括検証の中身」は何になるのか 政策効果や目標未達要因など3項目が柱か
[東京 2日 ロイター] - 日銀が検討中のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)政策の「総括検証」では、成果の評価と2%物価目標未達の分析、マイナス金利導入後の評価と副作用のチェックの3点が大きな柱になる見通しだ。その中で、国内金利の利回り曲線が想定よりも平坦化した点に関するメカニズムの解明と効果と副作用に関する分析結果が、大きな部分を占めそうだ。
複数の関係筋がロイターの取材に答えた。それによると、1)過去3年半の景気・物価・株価・為替などへの影響を点検、2)物価が目標の2%に到達していない背景を分析、3)マイナス金利導入後の大幅な金利低下のメカニズムと効果と副作用の分析──が主な内容となる方向だ。
中でも、マイナス金利導入後にマイナス圏へと突入した10年最長期国債利回り<JP10YTN=JBTC>やゼロ%台となった20年債<JP20YTN=JBTC>、30年債<JP30YTN=JBTC>など超長期ゾーンの金利を含め、利回り曲線の平坦化が想定以上に進んだメカニズムの解明が、大きな論点に浮上している。
ロイターとのインタビューの中で、桜井真審議委員は、マイナス金利導入によるイールドカーブ平坦化について「住宅投資が増えるなど実体経済への効果も出ている」が、「金融機関の収益などに影響があり、さまざまな意見があるのは承知している」「イールドカーブが予想を超えて下がったのは事実である。それによって効果はあったが、いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えて行きたい」と強調した。
日銀内では、景気を押し上げたり、引き締めたりしない実質均衡金利の水準に着目。理論的に中期ゾーンなどではマイナス圏にあったが、従来は金利の下限がゼロ%であったため、下がり切っていなかった部分が、ゼロ金利制約が除去されたことで、顕現化したとの分析が出ている。
また、量的緩和とマイナス金利の併用によって、想定以上に金利全般が低下した可能性についても、その要因などについて分析を進めているもようだ。
こうした点に関連し、欧州中央銀行(ECB)ではクーレ理事が今年7月、講演の中でマイナス金利について「現時点で弊害よりも利益を多くもたらしている」との見方を表明。同時に「長期にわたる低金利は金融政策の波及効果を弱め、金融安定を脅かす可能性もある」などと指摘。日銀内の議論の動向に影響を与える可能性もあるとみられる。
日銀は、前回7月会合で上場投資信託(ETF)の買い入れ増額による追加緩和を決めるとともに、物価が目標の2%に到達していない現状を踏まえ、9月会合で政策検証を行うと明らかにしていた。
(竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦)
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