スマホゲーム業界を救う「再生工場」とは? マザーズ上場マイネットはゲーム買収で稼ぐ

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また、ユーザーの目が肥えてグラフィックにも高い水準が求められるようになったことで開発期間は長期化し、費用も高騰している。加えて、ゲームのダウンロード数が減少する「成熟化」も年々早まっている。スマホゲーム事業者にとっては、泣きっ面に蜂とも言える厳しい市場環境となっている。

マイネットはこうした変化に適応したことで、業績を伸ばしている。同社の2016年12月期の業績予想は売上高が60億円、営業利益も3億円と、ともに前期から倍増する計画だ。

現在、成長ドライバーとして力を入れるのは、マイネットがゲームを買い取った上で運営する「買収型」のビジネス。共同運営する企業との間で収益を分け合う「協業型」も展開しているが、買収型の方がより利幅を稼げるからだ。

今期は、買収や提携を積極化して事業基盤を急拡大させている。今年5月にはグリーから約4億円で「戦乱のサムライキングダム」、「三国INFINITY(インフィニティー)」の2ゲームを買収。6月にはモブキャストと提携し、ゲーム配信プラットフォーム「モブキャストプラットフォーム」やスマホゲーム3タイトルの共同運営について合意した。

ゲーム買収をさらに加速する

マイネットは今後もゲーム買収を加速する方針だ。主に狙うのは月間売り上げが5000万円~2億円程度と「中ヒット」のタイトル。上原社長は8月に開いた決算説明会で、「タイトル数を増やし、スケールメリットを出していく」と強調。運営ゲーム間での相互送客に加えて、人気キャラクターの横展開を進めることで、ユーザーの獲得コストを減らす狙いだ。6月に総額21億円の銀行借入れをしており、軍資金も潤沢だ。

8月の決算説明会で、上原社長は「コストを抑えつつ、ゲームへの集客を進めていく」と強調した

ただ、他社が持て余すゲームを買い取るビジネスモデルには、当然、リスクもある。上原社長は2月の決算説明会で「ある程度ヒットしたゲームでなければ獲得しない。が、正直、10タイトルにひとつくらいは減損が出る」などと明かしていた。

採算性などに難点があったために手放されたゲームを集め、利益を積み上げるのは容易ではない。副業的に買い取り・運営を行う企業はあっても、「本業」にするのがマイネットだけなのは、そのためだ。

それでも、上原社長は「扱うタイトルが増えれば、沢山のデータを得られるので、コストを抑えて効率的な運用ができる」と自信を見せる。その言葉通りに業績を急成長の軌道に乗せられるのか。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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