前途多難な中国の行政改革 国の権限移譲進めるが、「安全運転」目立ちスピード不足

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ただし、国民に新たな時代が来るとの予感を持たせることも、新指導部には必要不可欠だ。そうでなければ、習近平国家主席が「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」の実現を高らかに何度も謳っても国民の心には響かないからだ。

そこで新指導部が本格始動に際して示した具体的な施策が「国務院の機構改革と機能転換に関する計画」という行政改革プランで、今回全人代で採択された。

李克強首相が就任後初の国務院常務会議で取り上げたのも、このプランの具体化であった。そのうち、目立った形で報じられているのは国務院の「機構改革」、すなわち省庁再編だ。なかでも汚職や事故などで批判の対象とされてきた鉄道部の解体にスポットライトが当てられている。

注目に値する国務院の「機能転換」

しかし、行革プランの中身をみると、やや地味にみえる国務院の「機能転換」のほうが後々大きなインパクトを持ちうるように思われる。

国務院の「機能転換」とは、許認可制度の簡素化や削減により、国に集中しすぎていた権限を弱め、市場や社会に任すべきものは任すことを指す。また、中央政府から地方政府への権限委譲も「機能転換」の一環として位置づけられている。この「機能転換」に関し、李克強首相は、今後5年間で国務院各省庁の1,700余りある行政審査許可項目を3分の1以上減らすと明言した。かつては既存の行政審査許可項目を削減する一方で、新たな項目を設けるといった事態が生じたが、今回はそうした行為も厳格に抑制する構えだ。

また、行政機関と業界団体が事実上一体化している現状を改め、その切り離しを図るとともに、同一業種内で複数の業界団体の設立を認め、それらに資格審査の権限を委譲していくことにもなった。目標達成度の確認や検査活動についても、法律、行政法規、国務院が明確に定めているものを除き、廃止されることになった。

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