結婚とは「一瞬が永遠に続く」という妄想だ

上野千鶴子さんが語る「結婚と家族」

でもね、母は被害者のままというわけではないの。女は家父長制の代理人として、ときに抑圧者にもなる。娘に対しては母として、嫁に対しては姑として。

母娘対決のタイミングを逃すな

そんな母娘関係の場合、いつか対決する必要がある。母親が、若くて元気だったら、たとえ対決して傷ついても、立ち直れる。一山を越せば、また別のいい母娘関係にもなれるしね。でも、私はそのチャンスから逃げちゃったの。大学進学を機に家から出てしまったから。

私が43歳のときに、母は亡くなりました。対決しようとしたときには、すでに病気にかかって弱者になっていた。だからそれが本当に心残りなのです。ですから、自戒も込めて、母娘対決のタイミングを逃すな、とアドバイスしたいですね。

それから、友だち関係について。必要なときに駆けつけてくれて、自分を支えてくれて、慰めてくれて、経験を分かち合ってくれるからこそ、友だち。放っておくのは友人ではない。友だちには、メンテナンスが必要なんです。メンテナンスというといかにもカタカナコトバだけど、いわば、水やり、ですね。

いまとなっては信じられないかもしれないけど、40年前に、女同士のあいだに、友情は成り立つか、女の敵は女、というテーマがディベートの題目になっていたことがあります。もし女が、自分が女であることを嫌悪し、相手が女であることを侮蔑していたら、女同士の友情は成立しない。でも、折にふれメンテしてきた関係というのは、そもそも相手の生き方にリスペクトがあるから。

友情のひとつに、同世代の友情があります。同じ時代に同じように成熟して、老いてきた。共通の経験がたくさんあります。だんだん私も高齢になるにつれて、ひとり去り、ふたり去り、3人去っていく。その人と共有した経験が、自分のなかからもぎとられて、スカスカになるような気分に襲われます。長生きのつらさってこれなんだな、と最近思うようになりました。

でもね、こう思ったの。ならば、若い友だちをつくればいいじゃないの、と。けれど、若い人は未熟だから、こちらが与えたのと同じものは返ってこない。そう覚悟しないと、つきあえません。見返りが欲しいという欲を持ったら、うまくいかない。これが年下の友人をつくる秘訣です。

そういえば、卒業時に、私にこうあいさつした学生がいました。「先生、長々お世話になりました。このご恩は、自分がこれから自分が教える学生に返します」って。みごとなせりふです。それで、いいんです、私に返ってこなくてぜんぜん、いい(笑)。

『おひとりさまの老後』の書名にもなった、おひとりさま。この言葉が広がったのは、とてもいいことだと思う。それまでは、高齢の独身女性へ対する呼び名は、ひどかったですからね。「嫁かず後家」、「オールドミス」「負け犬」ですから。

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