結婚とは「一瞬が永遠に続く」という妄想だ 上野千鶴子さんが語る「結婚と家族」

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結婚願望は、いまの若い世代も高いのよね。みなさんは、結婚したい? もう、しちゃった?

一瞬が永遠に続くと信じることを、妄想と言います。だから、結婚が一生続くと思うのは、血迷ったのか、それともルール違反を承知でぬけぬけとうそついたのか。私は、どっちもできなかったの。愚直だったのかも知れませんね(苦笑)。

そんなことを話している上野に対して、「実は、結婚することになりまして」と、すまなさそうな顔で言ってくる教え子もいます。でもね、結婚するな、と言っているわけではないのよ。自分の人生に巻き込んでいい、相手の人生に巻き込まれていい。そう思えるほどコミットできる相手は、一生のうちで5人もいないはず。そういう「血迷える相手」に出会えるのは、やはり幸福なこと。この経験は、しないよりしたほうがいい。相手の人生や人格に深く立ち入ることで、とことん、自分に向き合えるから。

ただし、このような関係を結ぶことは、婚姻届を出さないかたちでも可能です。上野は男嫌い、と言われるけれども、そうでもない。恋愛はしないより、したほうがいい。授業料を払ってでも、なにかを得られる関係は、持ったほうがいいと思っています。

家父長制という構造のドツボにはまっていた母

長年、朝日新聞のお悩み相談の回答者をしていますが、母と娘にまつわる質問がすごく多い。とくに娘からの相談で「母を嫌いになっていいのか。そんな私は、間違ってるのか」という内容のもの。

私の両親は、夫婦仲が悪かった。父は開業医で、母は専業主婦。母からは、「離婚できないのはあんたのせいよ」と、ずっと言われて育ったの。自らの不幸の原因が子どもにあると。子どもに負債感を負わせるという、いわば「弱者の戦略」を採用したんですね。

なので、ちっちゃいときは、「お母さん、かわいそう」と思ってたの。母は、ただでさえ娘を取り込んで味方にするからね。でもね、10代になって両親の関係をじーっと見て、こう思ったの。

「あなたの不幸は、夫を取り替えてもなくならないよ」と。なぜなら母が、家父長制という構造のドツボにはまっているとわかったから。だから、私は、はまらないでおこう、と思った。家父長制という構造について研究したら、『家父長制と資本制』という一冊のぶ厚い本になりました。書くのに10年かかりましたが、ああ、私は母のリベンジ戦をやったのだ、と気づきました。

ただ、私みたいな娘がいたら、いやだろうね、とも思うの。母を仮借なく批判する、思春期の娘。10代の娘を抱えて育てる母は、身内に刺(トゲ)を抱えるようなつらさだと思う。その後、娘は成長して人生経験を積むと、母の置かれた立場に理解と同情を覚えて、「お母さんも、大変だったのね」と、わかってくれるようになりますが。

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