日本は調査捕鯨を続けることができるのか シーシェパードとの合意は「空手形」?

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グリーンピースの元メンバーで反捕鯨団体シーシェパードの設立者、ポール・ワトソン氏。ウッドストックのホームオフィスにて(写真:AP/アフロ)

こうした動きばかりではない。AP通信が伝えるところによると、シーシェパードの創立者であるワトソン氏は8月上旬にフランスを出国し、現在は米国バーモンド州ウッドストックに滞在しているようだ。

まるでこの度の日本側との合意にあわせたかのようなタイミングだが、ワトソン氏は「米国シーシェパードが南極海の活動に資金供与や参画ができなくなっただけで、たいしたことはない」と豪語し、「シーシェパード・オーストラリアもシーシェパード・グローバルも、独自に南極海で活動できるし、私には指揮権限がない。日本は私を排除してシーシェパードの動きを封じようとするが、大きなミスだ」と挑戦的な態度を見せている。

捕鯨国の多くはアフリカやカリブ諸国

もっとも日本の調査捕鯨に立ちはだかるのは、シーシェパードだけではない。最たる壁は国際捕鯨委員会(IWC)と言えるだろう。

2年に1度開かれるIWCの総会は今年10月にスロベニアで開催されるが、それに先立って6月に開かれた科学委員会の報告書に、2014年3月に国際司法裁判所によって停止判決が下された日本の調査捕鯨の継続について賛否両論が併記された。

民進党捕鯨議連で事務局長を務める玉木雄一郎衆院議員はこれを評価する。「加盟国の過半数が捕鯨に反対するIWC総会では、日本の立場は厳しくなる。しかし科学委員会は専門家による会議なので、継続の必要性を認めざるを得なかったのだろう。そもそも捕鯨国の多くはアフリカやカリブ諸国で、貴重なタンパク源を鯨に頼るものの、経済的な理由で会議に参加できないこともある。日本にとって反捕鯨国であるオーストラリアやニュージーランドとの関係も大事だが、こうした国の代弁者としても捕鯨の重要性を世界に発信する必要がある」。

10月のIWC総会をどう乗り切るか。まさしく日本の外交力が問われる時だ。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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