ヒマラヤ、過去最多13店舗を「閉鎖」する事情 スキー人気低下、ファッション性でも出遅れ
もう1つある。問題は暖冬の影響や景況感など、一時的な要因だけではなく、市場の変化に対応できなかったことだ。実際、2015年8月期まで5期ほど売上高は微増しているが、値引き販売による在庫処分が続いた結果、営業利益は20億円台で横ばいだった。
ヒマラヤの祖業であるウィンタースポーツ市場は、長く縮小傾向が続いている。スキー・スケート・スノーボード用品は、2015年で1350億円(『レジャー白書2016』日本生産性本部)。20年前に比べて、3割ほどまで大きく落ち込んでしまった。
代わって伸びているのが、「アスレジャー」と呼ばれる市場だ。アスレジャーとは、アスレチック(運動競技)とレジャー(余暇)を組み合わせた造語で、米国でヨガパンツを普段着に取り入れるファッションが浸透したことが、流行のきっかけとされる。日本でも、スポーツウエアを普段着として、着用するファッションがトレンドになっている。
スポーツメーカー各社はこれらの動きに対応し、機能性を保ちつつも、ファッション性が高く日常着に取り入れやすい商品の開発に力を注いでいる。
おしゃれなスポーツウエアがトレンド
たとえばアディダスは、従来から著名なデザイナーが手掛ける「アディダス バイ ステラ・マッカートニー」など高付加価値レーベルを展開していた。最近では加えて、若者向けに低価格なレーベル「アディダス ネオ」について、トレンドを取り入れたファッション性の高い商品群を展開。歌手のセレーナ・ゴメスがデザインしたコレクションも発表した。ほかにも、女優の榮倉奈々を広告塔に起用した、女性向けトレーニングウエアを強化している。
国内メーカーではデサントが、素材や製法にこだわった都市向けレーベル「オルテライン」を展開。純国産のダウンジャケット「水沢ダウン」などヒット商品も生まれた。ゴールドウインは、アスレジャーに対応する新業態店「ニュートラルワークス」を、”スポーツの聖地”神宮に開業。ウエアや小物販売に加え、有料でヨガのワークショップやストレッチサービスを実施する。
アスレジャーに対応したような、トレンド性が高く、高付加価値の商品は、メーカーの直営店やアパレルセレクトショップなど、販路を限定して販売されることが多い。ヒマラヤの野水社長も「メーカーが客に直接アプローチする傾向が強くなっている。流通ごとに商品を分けていこうという動きだ」と分析する。
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