1円で乗れる「一円電車」に託す鉱山の街再生 「シンボル」復活と活性化に挑み続ける人々

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体験坑道の内部

藤尾さんはこう続ける。

「『一円電車』は動いた。次はこれをかつての線路跡の上に戻して、より長い距離を走ることができる本格的な運転にするという目標もある。けれども、それが到達点、最終目標であってはならないのです。それではその次に何をするのか?明延は鉱山の町です。幸いなことに鉱山の跡には見学コースを設けることができて、これは『体験坑道』として見学コースを設定し、いまは徐々に参加者が増えているという状況です。

また、かつて鉱山で働いていた人の住宅跡を整備して、『体験宿泊』というイベントも始めました。これは水回りの問題もあるので、人を誘致して住まわせるようなことはできていないのですが、小学生の課外授業として宿泊の体験をして頂くことができるようになりました」

「先ほども申しましたように、明延の現在の人口は80人です。しかもその75%が高齢化している。このまま時間が経てば、明延には人がいなくなるという計算です。そうすると、明延だけで活動しても限界があるということになる。それであれば、他の地域とどう連携するのか、ということが問われることになります」

鉱山の歩みを後世に伝えるには

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かつての鉱山住宅。現在は「体験宿泊」のイベントも行っている

さらに、藤尾さんは今後の姿について語る。

「いま、私たちの考えていることは、明延の鉱山の歩みを、もっと広い視野の下に後世に伝えてゆきたいということです。『一円電車』もある、『体験坑道』もある。けれども、それだけで鉱山が成り立っていたわけではないだろう。

もっと色々な人が、色々な仕事をしていたから、明延鉱山が稼働して、ここに独自の文化が育てられていった。そのことを伝えなければいけない。私たちが自らの課題と考えているのは、ただ『一円電車』を動かし続けるということだけではなく、明延を明延らしい姿で残してゆきたい。そこで、社会のあり方であるとか、文化のあり方を問うていきたいということなのです」。

「一円電車」が復活運転を初めて6年が経過し、一つの形が姿をなしつつある明延の活動が次にどのような姿を見せてくれるのか?私たちは期待を込めて、注目し続けていきたい。

(写真はすべて筆者撮影)

池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

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いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

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