1円で乗れる「一円電車」に託す鉱山の街再生 「シンボル」復活と活性化に挑み続ける人々

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復活運転の日に開催されるイベントの様子

こうして復活運転が常時行われるようになってから6年が経過した。まだ、かつての軌道跡を再整備して運転を行うには至っていないが、月に一度の運転の日には、線路のある広場に人が集い、ミニコンサートや軽食類の販売などのイベントが行われるようになった。

最初は、復活運転を懐疑的に見る向きもありはしたというが、今では町の多くの人が、月に一度のその日を楽しみにして、自主的な活動が行われるようになったのだという。やはり「一円電車」は、明延の人にとって、欠かすことができない「心の拠り所」だったということなのだろう。

ところで地域の活性化に避けることのできない大きな問題が一つある。ボランティア活動の目標や仕事を作ることは、それこそいくらでもできる。けれどもその担い手をどうやって見つけるのか。いま、全国で過疎化の進行が大きな問題となっている。限られた人だけでは、新しい大きな動きを作り出すことは不可能なのではないだろうか?

大きな目標は「雇用の創出」

「確かに人の問題は、私たち自身がジレンマを感じている問題です。地元の者だけでは人手が足りない。けれどもそれを都会に頼ってみても、アクセスの問題がある。私たちの希望は若い人が集まることだ。けれども現実には仕事をセミリタイアしたような人しか集めることができない。高齢化は明延でも深刻な問題となっています。それをどうしたら良いのだろう。

まずは希望者全員にとって、無理のない範囲の仕事を見つけることでしょうか。その上で、次にはネットを使って募集を続けてゆく。お陰様でぽつりぽつりとではあるのですが、都会からこの地に来てくれる人が現れるようになりました」と小林さん。

明延に来てさえ頂ければ、ボランティアの仕事はいくらでもある。残念ながら賃金を払うことはまだできないけれど、何とか人の力を結集して、「一円電車」を核として生まれた動きをより大きなものにしてゆきたいと言葉を続けてくれた。

「私たちが目標として掲げているのは、『一円電車』を動かし続けるということではありません。それも目標の一つではあるけれど、もっと大きな目標としているのは雇用の創出です。『一円電車』を動かし続けることで、それを雇用に繋げたいと考えているのです。それはまず細く長くということでも構わない。明延に行けばこんなことがあるんだ、というような町作りのヒントを提供できるようにしてゆきたい。それは物見遊山のようなものではなく、きちんと地に足が着いたものでなければならない」と、こう説明をつけ加えてくれたのは、NPO法人一円電車あけのべの理事長を務める藤尾賢介さんだ。

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