シン・ゴジラ、唯一の虚構「カヨコ」の存在意義

徹底した現実感を「空回り」させない仕掛け

そういった点はパトカー1台出動するのにも申請が必要だというシーンを入れて、これまでにない刑事ドラマのリアリティを表現した「踊る大捜査線」に通ずるものがあります。怪獣が出たからすぐに迎撃とはならないのが、この作品にリアリティを与えているのです。

また、ゴジラに対抗する人間側に焦点が当てられていることから、子ども向けの怪獣映画というよりは、群像劇の様相を呈した大人向けの映画に仕上がっています。

シン・ゴジラを観た人の評価はおおむね良好なようで、特に、安直な恋愛や家族愛、人間ドラマを一切廃したストイックなストーリー展開が評価を得ています。日本映画にありがちな点を排除したところに賞賛が集まっているようです。

確かに、映画のなかでは主人公はもちろん、主要人物の家族のことは一切描かれていません。あれだけの緊急時において、家族のことを考えないのは不自然ではないかなと思うほど、徹底して排除しています。

なぜ「カヨコ」にだけ、まるでリアリティがないのか

しかし、それがシン・ゴジラのキャッチコピー「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」の現実パートのリアリティなのかもしれません。実際にこのような災害が起こったとき、私たちだって対応する政府の人間の家庭や家族についてまで思いを巡らせたりはしないでしょうから。

そこまでリアリティを追求しているとなると、違和感を感じずにはいられないのが、石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースンの存在です。彼女は、ゴジラ上陸というとんでもない有事に対してアメリカから派遣された特使です。その設定に対して、なぜ日系である必要があるのか、女性であるのか、そしてあの若さなのかが疑問にあがります。

映画的に紅一点を入れておきたいというものであれば、それこそ安直に恋愛シーンや人間ドラマで涙を誘うこととまったく同じ行為であって、せっかくそれらを排除した意味がまるでなくなってしまいます。ジェンダー論的に女性の活躍の場を与えたいというのであれば、スター・ウォーズの最新作「フォースの覚醒」のレイように、主人公である矢口のポストを女性にすべきだったのではないでしょうか。ただそれもすでに過去の「ガメラ」で行っているので、いまさらそのためだけにというのも考えづらいところです。

また、彼女のゴジラを英語読みした「ガッジーラ」という発音も、ただただ日本人が想像するステレオタイプのアメリカ人を演じているようにしか見えず、リアリティが伝わってきません。

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