シン・ゴジラ、唯一の虚構「カヨコ」の存在意義

徹底した現実感を「空回り」させない仕掛け

話が逸れましたが、その設定重視のアニメキャラクターと同じく、カヨコもいわゆる“トンデモ設定”をつけられたキャラクターなのです。だから、現実的な描かれ方のニッポンパートにおいて浮いた存在として感じられるのでしょう。となると、カヨコはあくまでも虚構な存在として、あえて描かれていると考えるのがもっとも的確なのではないでしょうか。

あれだけニッポンパートでは現実にこだわっているのに、なぜそこに虚構の存在を入れる必要があるのでしょうか? それは、劇中の最大の虚構であるゴジラの存在と関係があります。いくらリアリティにこだわっても、映画の題材が怪獣ゴジラである以上、リアルに描き切るのは無理な相談です。日本政府を中心とした日本人が活躍するパートをいくら現実的に描いたとしても、それに相反するゴジラという虚構により、その現実感はある意味空回りになってしまうのです。

ゴジラという最大の虚構を受け入れるために必要な虚構

映画のキャッチコピーにあるように、この映画は現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)です。その現実対虚構をシームレスに繋げるには、現実の中に虚構を、虚構の中に現実を入れるしかないのかもしれません。そう考えてみると、カヨコの存在は、ゴジラという最大の虚構を受け入れるために必要な虚構なのです。つまり、現実と虚構の橋渡しとしての存在。陰陽太極図の陰の中の陽、陽の中の陰となっているわけです。

ゴジラへの最後の対抗策として発動したヤシオリ作戦も、始まってみると実際にそれが現実的な対処であるかがわからなくなってきます。ヤシオリ作戦を発動するきっかけとなったゴジラの対空防御性能や超高性能レーダーなども、ご都合主義とも捉えられかねないものですが、それらもリアルな対処法を提示しつつ、在来線爆弾というトンデモ兵器で中和されていたりします。

ともすれば、作品自体を壊してしまうようなウィークポイントになりうる存在ながら、ギリギリのところで踏ん張っているのが、庵野監督ならではってところなんでしょうかね。そう考えるとカヨコはあのカヨコでなくてはならないし、必要な存在だったんでしょう。まあ、ほとんど男性は、彼女の唇に見惚れて、そんな違和感など吹き飛んでしまうのでしょうけどね。

(文・岡安学)

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