資生堂、実力会長トップ復帰の「真相」 キーマンの社外取締役が“独占激白"

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そこで、前田会長は自身が決めたことも否定しながら、負の遺産を最小限にするという、しんどい、格好悪いともいえることをするという、大きな責任を負う。そして先に述べたように、それは社外取締役・社外監査役6人の一致した考え方だった。

4月に兼務で社長に復帰する資生堂の前田新造会長(右)と退任する末川久幸社長

社外取締役は、平時には会社の経営状況について経営陣の説明を受け、それを理解しようと努め、それを評価し、最終的には経営に信認を付与するというのがその機能である。もちろん、不正や違法があれば別だが。その意味ではもっとも経営に精通している経営陣の判断に対しては謙抑的な姿勢で臨むべきと信じ、そのように行動してきた。

しかし、そうしたわれわれとしても今、何も声をあげないことでは、その職責を全うしたことにならないのではないか、との思いを共有している。

福原義春氏を含めた相談役も、ほとんど経営には口を出してこなかった。しかし、今回は相談役の職責に相応しい形で意見を述べられたと聞いている。

体制整備が前田氏の最優先課題

前田氏は社長である以上、今後の成長戦略を描く努力をすることはその職責だが、それを本格的に行うのは次期の後継本格経営陣であり、前田氏の手による長期戦略の構築は、その優先課題とは言えない。次のトップが全力でアクセルを踏めるように、体制を整備するのが前田氏の最優先の仕事だ。

次の候補がいないというわけでなく、負の遺産の清算を次の経営陣の最初の仕事にさせてはならないというのがわれわれの一致した考え方だ。前田氏には酷な仕事という面もあるが、その点でわれわれは前田氏の能力と人格を信頼している。

資生堂はガバナンス(企業統治)が効いている会社だから、このような決断もできたと言われることを望みたいが、それだけにわれわれも大きな責任を痛感している。社外役員も皆、資生堂という会社が大好きなのだ。それだけに、学生にとってもっとも就職したい会社だった資生堂の従業員であるとの誇りを社員全員が持ちうるような会社になって欲しい。(談)

(撮影:梅谷 秀司、今 祥雄)

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事