資生堂、実力会長トップ復帰の「真相」 キーマンの社外取締役が“独占激白"

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それは一言で言えば、本格的な後継者にとって、この間の負の遺産の整理が最初の仕事になるような事態は避けるべきであり、むしろそうした本格後継経営陣には上昇ストーリーしかないと言えるようなところまで、聖域のない思い切った改革を行うことで事態の改善を果たす。そのことこそ前田会長の責任なのではないかというのがわれわれの一致した考えだった。

実力以上の配当は問題

では、その負の遺産とは何か。それはこれから本格的な検討を行うことで大胆に提示されるべきことだが、外部からみても情報開示への信頼性、連続する下方修正、配当性向が3年連続して100%を超えること、また大規模企業買収による巨額なのれんの計上等、対外的に明らかになっていることで、問題と思われる状況があったことは否定できない。対外的には配当性向40%を標榜しているが、それはまったく守られていない。

資生堂の社外取締役を務める上村達男・早稲田大学教授(2008年撮影)
うえむら・たつお●早稲田大学大学院法学研究科修了。主に会社法、資本市場法を研究。主な著書に「会社法改革―公開株式会社法の構想」(岩波書店)、「金融ビッグバンー会計と法」(中央経済社)など。

資生堂は、真面目な会社であり、CSRや社会貢献に熱心であること、長年にわたる顧客、株主からの信頼も厚いことから、マイナス情報の提供や減配といったことの断行をためらうところがあったのかもしれない。デフレ経済下で、高級化粧品のイメージが強い資生堂は、通販等の攻勢にさらされ、ビューティーコンサルタントによる対面販売をノルマを課さないで実施するといった手間暇のかかるビジネスモデルを堅持してきた。

参入障壁の低いこの業界で、資生堂は競合他社の目標になりやすく、しかも国内の不振を補ってきた中国で、尖閣問題等による不買等の問題が生じるなど、さまざまな外部要因があり、末川社長には気の毒な面が大きい。ただ、現状の問題を外部要因の責めに帰すだけでは足りないことも確かだろう。

11日の会見で前田氏は、「これまでの自分を否定することも含め」と話されたが、まさにそこに今回の人事のポイントがある。前田氏の経営には、後の資生堂にとってプラスになる面がたくさんあった。しかし、他方で、骨をも切るような改革を断行することはできなかった。

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