安倍訪米が”大成功”とは言えない理由 オバマ氏は安倍氏に距離を置いた

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今回の首脳会談では、TPPに関する共同声明を発表したにもかかわらず、オバマ大統領が安倍首相に一定の距離を置いた点を見逃すことはできない。両者の間に距離を感じた理由は4つある。

第1に、共同記者会見はなかった。昨年の4月30日に当時の野田首相と会談した際には、オバマ大統領は同時の深夜に、アフガニスタンへと極秘に出発する予定だったにもかかわらず、30分を割いて共同記者会見に臨んだ。オバマ大統領は日米同盟の重要性を語り、野田氏に軽い冗談を言い、数日前に日米両国の外交・防衛閣僚が行った「2+2」会談で発表したばかりの「共通のビジョン」を推進した。

 ところが今回、安倍氏との首脳会談で、オバマ氏は共同記者会見に時間を割かなかった。

第2に、オーバルオフィス(大統領執務室)でのやり取りが挙げられる。

オーバルオフィスでの安倍氏との短時間の会談で、オバマ氏は北朝鮮、アフガニスタン問題での協力、優先度の高い経済成長促進に言及した。ところが、尖閣、中国、沖縄には一言も触れなかった。野田氏との会談で発表した「共通のビジョン」にも触れなかった。安倍氏は、極めて間接的なやり方で、中国を非難しようと努力したが、中国政府を刺激したくない米国に従った。

オバマ大統領は少人数の報道陣から質問を受けたが、その内容は米国の予算削減に関する質問だった。オバマ氏は詳細に答えたが、安倍氏、日本、アジアには言及しなかった。

クリントン国務長官との違い

第3に、オバマ大統領もジョン・ケリー国務長官も、一見簡単そうな一歩を踏み出さなかった。つまり、1月18日には、当時のヒラリー・クリントン国務長官が、尖閣諸島における日本の実効支配を一方的に覆そうとするいかなる動きに対しても米国は反対する、と述べた。この点を再確認するのは簡単なことのように思えたが、オバマ大統領もケリー国務長官もそれを避けた。オバマ氏から具体的に中国を名指した強い発言を引き出したい、という安倍氏の当初の望みからは程遠い結果となった。

第4に、確かに米国政府は、安倍氏が国内でTPP参加を推し進めるのに使えるような、注意深く言葉を選んだ声明文を安倍氏のために用意した。しかしこれは、安倍首相が米国のアジェンダに合わせたということだ。安倍氏は、参議院選挙前にはTPPを推進する姿勢を取りたくなかったが、こういう結果となった。

結局、オバマ大統領は、日米同盟の強化は歓迎したものの、安倍氏を歓迎したのではなかったと言えよう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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