「ウマミバーガー」日本上陸が遅れている理由 日本語がルーツの米国発グルメバーガー

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その点、ウマミバーガーの日本のプロモーションでも、ワインとの相性が特徴的に打ち出されている。「グルメバーガーと言えばビール」というイメージが強いことも、無関係ではないだろう。昨年11月にオープンしたシェイクシャック、新業態をスタートしたフレッシュネスバーガーも、いずれもビールとの相性をうたっている。「ワインに合うバーガー」は客にとっても新しく、他店との差別化にもなりそうだ。

では、日本でのオープン時期やメニューなどを含め、今後の展開はどうなっていくのだろうか。時期については、今年6月の時点では「秋冬」と発表されていたものの、具体的な時期は調整中とのこと。それというのも、日本店を担うシェフの研修に、メディロス氏が予想した以上に時間がかかっているからだ。

「われわれが日本にブランドを紹介する際、マネジャーのトレーニングにかけるのは普通、何週間という単位です。ですが今回は飲食業であるということと、日本というウマミのルーツに戻って来るので、絶対成功させたいというウマミバーガー側の強い意向がありました。そこで、2カ月の研修を受けることになったのです。しかも実技だけでなく筆記テストをして95点以上の点数をとる必要があるという厳しい条件ですので、時間がかかることも予想されます」(メディロス社長)

スティーブン・メディロス/ウマミバーガージャパン社長。1976年3月17日生まれ。東京都昭島市出身、セント・メリーズ・インターナショナルスクール、メリーランド大学卒業、1998年BNPパリパ証券に入社。1999年、兄のポールが起業した会社の副社長に。2011年にVISIONIZEを起業。2016年にメディロスホールディングス、ウマミバーガージャパンを設立

ウマミバーガーにとっては、「味」はブランドを最大に表現するもの。そのためシェフへの要求は厳しいようだ。素材へのこだわりも強い。たとえば、肉は米国で使っているのと同じ品質のアンガス牛を仕入れるという。「普段は米国内だけで消費されるため、海外には輸出しない部位のもの。それ以上は企業秘密です」というから、それだけでも期待が高まる。

このように、ウマミバーガー本社では、ブランドとして本質的な味への追求はしっかり行っていくようだ。しかし、コンセプトやメニューを、日本の風土に合わせアレンジすることには柔軟だそう。目下、さまざまな日本人に試食を行い、味やサイズを含め、メニューの決定を行っているところだという。

「キムチのような辛い味もありえるかもしれません。絶対に人気が出そうなのがスイートポテト。“大学いも”に似ていますが、シナモンが利いていてスパイシーです。また、“ビーツ”などの日本でなじみのない食材も紹介したいですね」(メディロス社長)

日本食で育ったメディロス氏の味覚が、メニュー決めにも大いに発揮されそうだ。本国で行っている店舗限定バーガーも、もちろん日本で展開される。

価格はグルメバーガーの1.5倍程度

価格は1200円からで、飲み物を合わせ客単価2000~2500円を予定。メディロス氏によれば「グルメバーガー平均の1.5倍ぐらい」だという。この設定は本国でも同様で、本当に良質なハンバーガーを追求し、肉の種類や、うま味素材を複数使用した結果の価格だ。

気になる1号店の立地は、現在のところ秘密とのこと。2020年までに10店舗、主要都市にまんべんなく進出する計画だ。米国のソウルフーズとして逆輸入される「うま味」が日本人の舌をいかに満足させるか。まずは店舗のオープンが待たれる。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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