阪神「虎マーク」が80年間も変わらない理由 生みの親は「鉄道会社」のデザイナーだった

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ところでタイガースの黄色は虎の色から来ているが、虎を黄色と認識しているのは世界的には少数派のようである。北米のデトロイト・タイガースやソウルオリンピックのマスコットの虎はオレンジで、世界中のタイガースを見ると黄色は少ない。本物の虎は黄色でもオレンジでもなく黄土色であるから、各地域の虎のイメージは球団カラーなどで刷り込まれたものなのであろう。とすると日本で虎が黄色であるという認識は、早川源一のデザインが源になっているのかもしれない。

「逆光」生かしたポスターも斬新

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「大阪タイガース来る」(画像提供:公益財団法人野球殿堂博物館)

意表をつくアングルとライティングも早川源一の印象的なデザインの特徴である。世界のタイガースの虎を並べてみると早川源一の虎だけ、他とは異なり、下から見上げる角度で描かれている。人間より背の低いものは無意識に見下ろすような角度で描かれる。それに見慣れているので、見上げる虎には見たことのないインパクトを感じるのだろう。「大阪タイガース来る」もインパクトを感じる作品で、それはライティングによるものと私は見る。普通なら主役となる対象には正面から光を当てる。しかし早川源一のデザインは逆光である。「甲子園・香櫨園 海水浴場」でも人は日焼けではなく、逆光で真っ黒である。夏の海の主役は人ではなく太陽であると言わんばかりの印象的な構成である。

早川源一の作品には、既存の手法にとらわれずに対象を描き切る意志の強さを感じる。鉄道会社内にいながら個性を持ち続けていたことは彼のデザインの力量の高さの証である。 グラフィックデザイン界の大御所、今竹七郎(1905~2000)も次のように評している。「早川君の作品はどんな種類の人間をもたやすく魅了してしまうところの不思議な力をもっているのです」。

タイガース以外にも、優れたマークを持つ球団があった。南海ホークス(1938年~1988年、現在のソフトバンク)の鷹マークはシンプルで誰が見ても鷹そのもので、球団旗にも、帽子のマークにも使われていた。デザインは今竹七郎で、彼は職業図案家として多くの作品を手がけた。それだけでなく商業美術の発展に貢献する活動をした。早川を高く評価した論文を残しているのも大きな貢献である。超一流デザイナーによる鷹マークであったが、球団が身売りされたときに葬り去られてしまった。

近鉄バファローズ(1950年~2004年、現在はオリックスに吸収合併された)の猛牛マークも最高にすばらしい。デザインは、あの“芸術家“岡本太郎。何の説明も要らないであろう。この“芸術”作品も球団の吸収とともに消えてしまった。どんなに優れたデザインでも、それが生き続けるのは難しい。

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