阪神「虎マーク」が80年間も変わらない理由 生みの親は「鉄道会社」のデザイナーだった
この2球団はチーム名が引き継がれたのにデザインは棄てられてしまった。いくら著名であっても部外のデザイナーに頼むということは、いざとなれば別の著名デザイナーに新たなデザインを頼めばよいという意識が潜在的にあったのかもしれない。もし社内に自らデザイナーを抱えて、自らデザインしたのであれば、違った運命であったのかもしれない。
タイガースのデザインのすばらしさと早川源一の功績を見てきたが、ここから学べることは多い。企業が親しまれるにはデザインが大きな役割を果たす。つまり球団とファンを結ぶのがデザインであることをみてきたわけだが、鉄道においてもそれは同じだ。鉄道会社とお客様を結ぶのはデザインなのである。
そのことを鉄道車両に当てはめて考えて見る。シンプルで明快なデザインになっているか。お客様が迷うことなく自分の乗るべき車両とわかるデザインになっているか。どこの鉄道会社かわかるシンボル性はあるか。安易に名前のあるキャラクターに頼っていないか。意図なく部外のデザイナーの名前に頼っていないか。
鉄道会社自らが意図を持ってデザインをすることは、考えのブレない統一したイメージを積み上げることにつながる。そして長く親しまれたら、それはブランドになるであろう。鉄道は地域と共に歩み長い年月にわたり存続し続ける使命があるので、飽きのこない質の高いデザインが求められているのである。
地域に長く親しまれるデザインを
私は学生時代にデザインを専攻し、デザインで公共交通をわかりやすく便利なものにできると信じて鉄道の会社に入った。そして社内にデザイン出身の先輩がいない中で、早川源一の存在を知った。会社は違うが鉄道会社でデザインをしていた先駆者として、他人とは思えなかった。彼が残したのは野球のデザインであるが、その事例から読み取り学んだことの一端を紹介させていただいた。
現代においてはデザインの専門性は高度化しており、そうした人材を鉄道会社が養成することは難しいかもしれない。しかしデザインの効用を信じて、意図のあるデザインを求める姿勢を継承していくことはできるはずだ。そうした意味でも早川源一の功績を語り継ぐことは価値のあることだと思っている。
地域に長く親しまれるものを自ら意図を持ってデザインすること、野球も鉄道も同じである。
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