阪神「虎マーク」が80年間も変わらない理由 生みの親は「鉄道会社」のデザイナーだった
タイガース球団も、阪神電鉄のさまざまな関連事業のひとつとして1935年に誕生した。それを記念するポスター「大阪タイガース来る」(1936年)には、虎マーク、Tigersのロゴとともに、Genichi Hayakawaのサインが描かれている。
重要なのは、鉄道会社内のデザイナーが自社の球団のデザインを手がけたということである。もし部外のデザイナーに頼んだならコントロールが効かなくなるかもしれないし、また、デザイナーが変わるたびにイメージがふらつくということにもなりかねない。(これは現代において鉄道車両のデザインについても通じることであるが、それは最後に触れる。)鉄道会社にデザイナーが存在するということも奇跡的であり、また彼が球団のデザインにもかかわったことも奇跡であるように思う。
巨人のオレンジは、球団創設時にはなかった
次に虎のデザインのクオリティの高さを説明してみたい。それを見て誰もが虎と認識できることがまず凄いことである。目の形、鋭い牙などの正確な表現もあるが、特に縞模様が的確に描かれているところが秀逸である。この縞の明暗の面積バランスが絶妙である。カラーではなく白黒で表現しても違和感なく虎に見える。
これはさまざまなデザインアレンジに耐え得るということであり、ブランド展開をするうえで極めて使い勝手が良い。私は遊びで、よくこの虎をアレンジするのだが、本当にさまざまな変化に耐える。たとえば鉄道路線図風にアレンジしても、オリジナルの早川デザインの虎が読み取れる。
またカラーで印象づけることもブランディングでは重要であるが、タイガースといえば黄色、と誰もがイメージできることにも成功している。その源は虎マーク、球団旗に彩られた黄色にある。デザインの基本アイテムの完成度が高いと、あらゆるデザイン展開に応用できるのである。
ちなみにカープの赤がチームカラーとして定着したのは赤ヘルの初登場とチームが初優勝した1975年。それまでは特定の色はなかった。巨人のオレンジも球団(1934年設立)ほどには歴史が古くなく1953年、同じチーム名のニューヨーク(現サンフランシスコ)・ジャイアンツのユニホームを模したことがきっかけのようだ。阪神が自らデザインしたことに対して、巨人は既製品を借りてきた。この手法の違いは対照的で興味深い。球団によっては特定のカラーがないか、あってもカラーを頻繁に変えることもある。これでは愛着を持続できないファンが出てくるかもしれない。
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