瀧本:僕はならないと思います。ちょっと前まで人間がやっていたことが機械化されていく。たとえば駅の改札の切符切りが自動改札になりました。
自動車も工作機械が大部分を作るようになって、人間は機械が間違えていないかをチェックする。田植えも機械化されましたし、農薬もドローンがまく。人間の仕事を機械がやるようになっても、人間が新しいことを考えて、新しい仕事を作って、人間はその先にいけばいい。
自分で新しいルールを作っていくことが大事。羽生善治名人に、このままだと人間が勝てない日が来るか訊ねると、「そのとおり」と仰っていました。ただし、対策があるとも言っています。「そうなったらルールを変えればいい。桂馬が横に飛ぶ、とかルールを変えてしまえば、また人間が勝てるようになる」と。これは名言ですね。ルールを変えることは人間にしかできないんです。
木本:そうなると、コンピュータは大慌てですよね。人間がルールを支配することが大事だということがよくわかりました。
ところで僕の妹はパンを売る仕事をしています。たとえばAIがパンを作ってAIがパンを売るような時代が来たら、何をすればいいんでしょうか。
水素自動車は大化けするかもしれない
瀧本:いろいろ考えられます。まずパンで勝負してもいい。パンは工業化が進んでいて、工場でたくさん作って全国に配られている。袋入りで、腐りにくくて食べやすいというのが特徴。もし、僕がパン屋なら逆の発想で、すぐに腐るパンを作ります。衛生管理よりも手作り感を大切にしているので保存できません。買ったらすぐに食べてください。腐ることが我々のウリなんです、とアピールする。
じっさい、そういうこだわりのパン屋は成功している。機械化して安心して食べてもらう会社はそれが使命でいいのですが、「シェフの気まぐれで毎日違うパンを作っているから、ここに来ないと買えませんよ」でも、じゅうぶん勝負できます。
木本:なるほど。人間のきまぐれを武器にすればいいわけですね。AI以外にはどんなジャンルに注目していますか。
瀧本:材料分野です。軽いんだけど硬い素材などは実用化されています。これは最先端科学の塊で、これからはナノテクでいろいろな部品がプラモデルのように設計できる時代がやってくる。今までの素材の常識が壊れていくので、どんどん新しいモノができる可能性があります。
設計するのは難しいのですが、ある法則を使うと分子が勝手に都合のいい並びになってくれる。すると作るのがとても楽になる。そこを最先端科学は挑戦していて、今いちばん面白いですね。
木本:科学が発達すると、今後石油が枯渇しても、新しいエネルギーが生まれて心配がいらない時代が来るんでしょうか。
瀧本:その研究をしている人もいます。たとえば水素エネルギーは可能性があります。電気自動車やっているアメリカのテスラ・モーターズは「ありえない」といって、水素自動車をディスって(=侮辱して)いますが、トヨタは一生懸命やっていて、もしかしたら大化けするかもしれないのが水素自動車なんです。
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