「沖縄の貧困」を最底辺で支えるヤミ金の壮絶 那覇市内の"高齢売春特区"で起きていること

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戦後に赤線となった、栄町社交街

「債務者はみんな学歴が低い貧困層です。普通の人は借りないですよ。だから何も考えていない人が多い。返済に困ってから現実に気づく人がほとんどで、司法書士に泣きついて債務整理が入っても一時的に取り立てをやめるだけです。ヤミ金は自宅に行ったり、旦那とか彼氏の職場とか行くから、結局、返してきますよ。債務者は優しい人とかまじめな人ほど、追い込まれますね。誰かから奪う、陥れるみたいなことは毎日なので、ヤミ金の人たちは普通の感覚じゃないですよ」

葬式にだって回収へ行く

全国どこもヤミ金を営むのは、地元の元不良少年たち。債務者は明日、明後日の生活が苦しい貧困層だ。おカネのない貧困層から奪う弱肉強食なので、追い詰められて自殺する債務者は定期的に現れる。悲劇には慣れている。葬式まで回収に行く者もいるという。

「これから回収ですけど、債務者を取材できたら5000円か1万円出せます? あの子は風俗嬢だったかな」

深夜23時ごろ、大城君はそんなことを言い出した。私がうなずくと、軽自動車で那覇の市街地に向かう。車で10分ほど、小さなアパートの前で停まった。大城君は1階の部屋のチャイムを押し、女性と話す。

1分もしないで話がまとまり、自宅アパートから平良瑠美さん(29歳、仮名)がやってきた。取材謝礼を1週間分の支払いに充てるとのことだ。平良さんは違法店のピンサロ嬢、体型は若干太くスペックは高くはない。4カ月前からヤミ金に手を出している。

「半年くらい前にお客さんが全然入らない店に移ってから、ドン底です。週末でもお客さん2人だけとか、平日ゼロとか。夜10時から朝6時までのオープンラストいても、全然稼げなくなった。1日6000円とかで、送迎代引かれて5000円とか。そんな状態が続いて、生活はキツイというか無理になりました。家賃を支払ったら生活費なくなっちゃうし、食べなきゃいけないし。家賃滞納すると、今度は出て行けってなるし。おカネが全然足りなくて、友達にヤミ金を紹介してもらった」

平良さんの月収は1日5000円×22日で11万円ほど。生活保護水準を下回るかなり厳しい金額で、ヤミ金の負債は現在進行形でだんだんと増えている。現在は4社から10万円、合わせて40万円の負債がある。一人暮らしで家賃、光熱費、携帯を合わせて定期的な支払いは6万円ほど。可処分所得は5万円しかないのに、ヤミ金に週4万円の返済をしなければならない。家計は完全に破綻していた。

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