「沖縄の貧困」を最底辺で支えるヤミ金の壮絶 那覇市内の"高齢売春特区"で起きていること

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大城君は栄町が故郷だ。中学校時代の同級生、先輩後輩が何人もヤミ金業を運営し、さまざまな業者の債権回収や融資の手伝いをする。高校中退以降は地元の友達のツテで違法カジノや風俗店で働き、10年ほど前から仲間たちが続々とヤミ金に手を染めた。

ヤミ金とはヤミ金融の略称で、貸金業として登録をしていない金融業者である。法律外の暴利でおカネを貸し付けする違法ビジネスで、全国に存在する。ヤミ金はすべて現金、債権回収、電話1本で貸し付ける融資と人手がかかる仕事で、定職に就かない大城君に地元の仲間たちから声がかかる。

「売春婦とか水商売のおばさんは、その日暮らしですよ。ほとんどがヤミ金からおカネ借りてる債務者です。おばさんたちは夜9時くらいから客を取って、朝方4時くらいまで働いている。深夜1時あたりには売春したおカネを持っているので、栄町では深夜1~2時くらいがヤミ金の集金時間帯なんですよ。0時を回ると、ちょんの間の前にバイクが何台か停まります。ヤミ金の取り立てですね。売春したおカネをすぐに返済させるわけ。ヤミ金は夕方から夜までは営業と融資、夜から深夜に掛けて集金に回って、1日の最後に栄町で集金する。それで1日が終わる」

沖縄特有のヤミ金システム

沖縄ヤミ金は週掛けと呼ばれる金利を採用し、本州をはじめとする他の都道府県のヤミ金とはシステムが違う。その仕組みを説明しよう。

10万円を貸すとする。沖縄では融資時に利息3万円を最初に差し引かれて、現金7万円と10万円の借用書を交換する。そして、その場で初回(1週間分)の返済を求められ、実際に手にするのは現金6万円。その日から毎週1万円を元金返済し、10週間続ければ完済となる。他の都道府県では一般的なトイチ(10日に1割)、トサン(10日に3割)など、元金が減らないシステムと比較すると暴利を貪るが、生かさず殺さずが続く、まだ良心的なシステムといえる。

「ヤミ金業者はみんな横でつながっている。約束の日に集金に行っておカネがないとなったら、あいつカネがないから、貸し付けてくれってほかの業者に頼む。追い込まれているから利息が高くても借りるんですよ。そうやって債務が雪だるま式に増えていく。栄町のおばさんたちは20社、30社から借りていますよ。1日4~5社の返済がある。おばさんたちは売春しても15分3000円にしかならないから、1日の稼ぎはせいぜい1万2000~2万円程度でしょう。売春しても解決しないわけですよ」

ヤミ金業者の多くは母子家庭育ち、中学時代にヤンキーだった者たちだ。大城君もそうである。中卒、高校中退して一度は働いてもすぐに辞め、夜の仕事を転々として20歳前後でヤミ金に落ち着く。

債務者はクレジットカードが作れず、消費者金融が貸し出さない風俗嬢や男性店員、違法風俗で働く売春婦、博打好きのおじさんなどで、似た者同士でおカネが行き来して、債務者は暴利をむさぼられている。底辺の貧困層の中に、さらに残酷な弱肉強食があるのだ。

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