米国株は、なぜ史上最高値を更新できたのか カギはケインズ政策にある
現在米国の債務拡大を担っているのは、企業と家計の消費者ローンであり、ともに合理的金融財務活動を推進している。企業の債務増(年7%増)のうち半分は自社株買い用であり、企業は低金利を利用し資本の債務化(Equity to Debt Swap)を活発化させ財務効率を高めている。また家計は雇用回復によりリスクテイク能力が高まり、消費者ローンを7%成長に復帰させている(住宅ローンは1%台と低調)。
とはいえ、米国も「流動性の罠」に陥るリスクがあるとすれば、それは世界的金利低下の波が米国に押し寄せ、「長期金利を潰すこと」である。
世界景気の後退と米国の独り勝ちがドル高、米国への世界の余剰資金の集中をもたらし、「dollar cash is king」つまり、ドル現金選考が際限なく進むケースだ。米国経済パフォーマンスの圧倒的優位性が明確な今、この可能性は十分に考えられる。
理由は何であれ、米国長期金利が日欧のように潰されれば、金利スプレツドがなくなり、金融市場が不能化する事態も考えられる。
カギはケインズ政策にある
その場合の鍵は、空前の長期金利低下を是とする政策を打ち出せるかであり、カギはケインズ政策にある。資本が潤沢化し金利が限りなく低下したとして、米国政府は本格的ケインズ政策に乗り出すだろう。何に投資するか、インフラ、国防、技術開発、環境などだろうか。
次期大統領候補の民主党クリントン候補、共和党トランプ候補共に、積極的財政政策を、アジェンダとして挙げている。実際米国インフラの老朽化が進んでおり、財政赤字もGDP比10%(2010年)から2%台(2015年)まで低下しており、長期金利は空前の低さ、となれば絶好のケインズ政策環境と言える。
考えてみればよい時代だ。ふんだんに資金があり、その使い道に困っているということなのだから。人間の英知でこの前人未到の事態を切り開くことができないわけがない、と考えるべきである。
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