トヨタ人の合言葉「なぜなぜ5回」の威力 社歴40年のトレーナーたちが語る
失敗しそうなときにやりがちなのが、力わざで火消ししようとすること。でもこれも得策とはいえません。
そのとき、一見問題は鎮火したように見えますが、実際には火種は全く消えていません。見えなくなっているだけです。
トレーナーの森川泰博が管理監督者として新車ラインの立ち上げに携わった時、このような経験をしました。新車立ち上げラインは、作業に慣れていないためラインが止まりがちですが、お客様のもとに早く車を届けるために稼働率の維持向上が必要です。そこで森川は、稼働率維持のために自分がラインに入る決断をしました。その様子をみた上司が、森川にこう言い放ちました。
「ラインに入るなら、ずっと入っておけ。どうせ、楽したいんだろう」
森川はその時のことをこう振り返ります。
「上司の言葉にカチンときて『ラインを止めないために必死なんだ!』と反論しようとしました。しかし、後になって冷静に考えると自分の過ちに気付きました。管理監督者である私の仕事は、目先の稼働率維持のためにラインに入ることではなく、中長期的な稼働率維持のために、ラインがうまく回らない真因を探し改善することだと上司は言いたかったのです」
できる人が急場凌ぎの火消しに入ってしまうというのは、新人が担当する仕事でもよく発生しがちはないでしょうか。例えば、新人のスキルが足りなくて仕事が回らない、納期遅れになるという場合。誰かがいつも手伝っていては、継続的にバックアップ要員が必要になるだけで、根本的には問題は解決しません。一時的にバックアップ体制をとりつつも、新人だけで仕事がまわるように教育を行ったり仕事のやり方を見直す必要があります。
忘れたい失敗こそ「記録」する
「過去の失敗は忘れてしまいたい」という一般的な心情を考えると、過去の失敗はなかったこととして忘れたいもの。そうすると、同じような失敗が発生しがちです。トヨタの中興の祖である豊田英二は「失敗はキミの勉強代だ」と、失敗したことを記録に残しておくことをすすめたといいます。
現代のトヨタにも、失敗の共有を促す取組みが数多くありますが、代表的なのが毎月定例の「品質会議」です。ここでは、現場で発生した問題について、「どんな問題が発生し、何が原因で、どんな対策をとったのか」を管理監督者が重役に報告する会議で、その内容は全社で共有されます。失敗の情報を共有することで、同じような問題が他の工場などで発生した際にもスピーディーな対策が可能で、事前に対応すれば失敗の発生自体を未然に防止することもできます。
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