「悪いドル安」が始まった米国株が気掛かりだ 米雇用統計次第では「魔の8月」もありうる

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世界の株式市場を牽引してきた米国株だが…(写真:ロイター/アフロ)

日本株の調整が始まった。3日の日経平均株価は前日比308円安の1万6083円となり、筆者が重要と考えていた1万6250円を割り込んだ。投資家の多くが注視していると思われる25日移動平均線も割り込んでおり、短期的には弱気に傾きやすくなっている。またドル円相場も一時100円台に突っ込むなど、円高基調が株価を抑えやすい地合いになっている。この基調が続けば、夏休みの薄いマーケット環境の中、下落基調が続く可能性がある。昨年8月の「チャイナショック」に続いて、今年も「魔の8月」となるのか、要注目である。

今回の株価下落は、日銀の政策内容に対する市場の評価と考えている。市場では、7月28・29日開催の日銀金融政策決定会合において、相応の規模と内容の政策が打ち出されるとの期待が高まっていた。また、「ヘリコプターマネー」や「永久債」といった、過去にない政策導入の可能性への期待もあり、事前に株価は上昇し、ドル円も円安方向に進んでいた。市場サイドの準備は十分に整っており、あとは日銀の政策発表を待つのみ、といった状態にあった。

ETF買い入れ増額はPKOそのもの

しかし、ふたを開けてみれば、中身はETFの買い入れ額の増額とドル供給枠の拡大等にとどまった。まさに、市場の期待を裏切る内容だったといってよいだろう。そもそも市場の期待が高すぎたことも、その後の失望売りにつながったのだろうが、これまで本欄で何度か指摘してきたように、日銀の政策にかなり限界が来ていることを考えれば、過剰な期待をするほうがむしろ危険であったことは明白である。

銀行関係者は、マイナス金利の深掘りがなかったことに安堵したと思われるが、一方で債券市場関係者は、国債買い入れの増額がなかったことで、国債先物が暴落したことに対する恨み節もあるだろう。そもそも、日銀の政策に乗って買い進んでいたにすぎないのだから、このような事態になっても文句は言えまい。いずれにしても、ETFの買い入れ額の増額で、株価は支えられる可能性が高まったことは、株式市場関係者を少なからず喜ばせることになったはすである。6兆円という金額は、客観的にみればとてつもない数字である。株価上昇への期待感が高まるのも無理はない。

しかし、このような人為的な株価操作ともいえる政策が奏功するのだろうか。過去にも同様の政策が行われた歴史があるが、最終的には失敗に終わったと評価されている。日銀のETF買い入れ増額は、文字通り株価維持策(PKO)そのものであり、実体経済への影響が物価引き上げに直接つながる政策ではないだろう。

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