「悪いドル安」が始まった米国株が気掛かりだ 米雇用統計次第では「魔の8月」もありうる
「いや、株価が上昇すればセンチメントが好転し、景気はよくなる」との反論もあろう。しかし、日経平均株価が2万円に達しても、そのような状況にはならなかったし、今後もその可能性はきわめて低いだろう。もちろん、株価は安いより高いほうが良い。しかし、そのような状況になる背景が、企業業績の拡大という健全な理由でない限り、結局は持続しない。とにもかくにも、現在の日本株は極めていびつな構造になっている。このような市場に対して、日本株の買い手と期待される外国人投資家が再び参入するかはきわめて疑問である。
一方、株価を不安定にさせてきたドル円が、再び円高圧力にさらされていることも、日本株の重しになりそうだ。先週末に発表された、4~6月期の米GDP速報値が市場予想を下回ったことを発端に、ドルが急速に売られる展開になっている。これまでは、英国のEU離脱決定を背景に欧州通貨が売られることでドル高が進んでいたが、GDP統計をきっかけに、まさに「悪いドル安」が進行し始めている。
チャイナショックの再燃につながるリスク
従前であれば、ドル安は米国株にはポジティブな材料と受け止められていたが、今回のドル安への転換の背景が景気鈍化であることを考慮すれば、決して歓迎されるものではない。景気鈍化懸念により、米国の利上げ観測が後退すれば、ドル安が進捗し、これが世界の金融市場に悪影響を与える可能性もある。中国の購買部担当者景況指数(PMI)がフシ目の50を割り込み、中国経済への懸念が再び高まる可能性もある。そうなれば、まさに「チャイナショックの再燃」につながるリスクを念頭に入れざるを得ないだろう。
おりしも、米国株が高値圏で推移し続ける中、ダウ平均株価の上値が重くなりつつある。世界の株式市場を牽引してきた米国株が、経済指標の伸び悩みを理由にこのタイミングで崩れるようだと、きわめて厳しい市場環境に陥ることを覚悟せざるを得ない。原油価格も需給緩和を背景に下落基調が続いている。
一方で投資家は、安全資産である金を再び買い始めている。すでにリスクオフの動きに移行しているように思われるが、6日発表の米雇用統計の内容が市場の期待外れに終わり、これがトリガーとなって「魔の8月」を迎えるリスクには十分な注意が必要であろう。8月は夏休みシーズンで市場参加者も減ることから、取引も薄くなる。急激な価格変動が起きやすい季節であることを理解しておきたい。
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