韓国社会が大揺れ、「接待文化」と決別できるか 劇薬「金英蘭法」が突き付ける究極の選択

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接待需要に支えられている飲食店にとっては死活問題だ

実際に官公庁近くの韓定食店で話を聞いてみると、「最近の不況で知り合いの韓定食店も次々と店じまいしているのに、金英蘭法で3万ウォン以下のメニューをださないといけない。この中に酒代も含まれるし、人件費も捻出しないといけない。この先、どうなるのか分からない」と頭を抱える社長ばかりだった。韓国での韓定食はお手頃コースでも最低5万ウォン以上が相場だ。

旧盆の贈り物で人気の高級牛、韓牛(韓国国産牛)や水産物への打撃もマスコミで大々的にとり上げられた。韓国農畜産連合会などは過剰規制だとして記者会見を開き、農林畜産食品部では年間8000億ウォン(約736億円)~9000億ウォン(約828億円)の損失が出ると推算。

韓国経済全体の損失は1兆円との試算

韓国経済研究院でも、韓国経済全体で年間約11兆6000億ウォン(1兆0067億円)の損失が発生すると試算した。柳一鎬(ユ・イルホ)経済副総理兼企画財政相も「(この法律の)問題は韓牛農家などの特定業種への影響があまりにも大きいということにある」と発言し、韓国銀行総裁も「消費に否定的な影響を与える」とし、実際に韓国銀行は今年の経済成長率を下方修正した。また朴大統領も、「このまま(金英蘭法を)施行すれば経済をとても萎縮させるのではないか憂慮する」と触れていた。

こうした声が上がる一方で、別の農民団体は、「農民などの苦しみを口実に金英蘭法を有名無実化させてはいけない。施行を遅らせたり、延期したりすることは許されない」とし、また、短期的に打撃があっても長期的には社会の透明性が高まると期待する声もある。政界では、与党ではすでに施行前の改正案を提出しており、野党は施行後に問題点を議論すべきという立場を取るなど、韓国社会には混沌とした雰囲気が流れていた。

そもそもこの金英蘭法が後押しされたきっかけは、2011年に釜山で起きた「ベンツ女性検事事件」だ。これは、ダブル不倫の関係にあった男性弁護士に刑事事件の情報を流し、同僚の検事などに特別の計らい(請託)を依頼し便宜を図った女性検事が、見返りとしてベンツやシャネルのバッグを受けとっていたもの。

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