世界最大のPFの融資団代表に
同プロジェクトの融資総額は58・4億ドル、当時、世界最大のPF案件だった。工藤はその事業にファイナンスアドバイザーとして参加した。
アドバイザーはいわば融資団の代表。貸し手の立場だけでなく、どうすれば融資を受けられるか、顧客とともに事業計画を作り上げる。どこにプラントを作り、どこから原料を調達するか、人員をどう確保するか……。”体育会”を地で行く工藤は、短期の出張を繰り返し、何度も現地に赴いた。
大型のPF案件は、まとまるまでに時間がかかる。サウジのプロジェクトでは、足かけ2年の歳月を要した。イスラム諸国は木・金曜日が休み。土日は働く。クリスマスや正月休みはない。「プロジェクトが終わるまでは、つねに仕事と一緒にいた感じ」(工藤)。
文化の違いを超えて、国家的なプロジェクトを金融面からサポートする。こうしたダイナミックさが、PFの醍醐味だ。最終的に融資団は日・欧・米・中東の19行に及んだが、その一部にまだ馴染みの薄かったイスラム金融を導入した。
イスラム金融には利子の概念がない。西洋諸国のファイナンス手法とはまったく異なるが、現地の強い希望を受け入れた。海外の案件では、現地のニーズにきめ細かく対応する姿勢が重要になる。
銀行の“壁”を越えよ!
2009年、工藤は環境ソリューション室長となり、邦銀としていち早く温暖化ガス排出権ビジネスに取り組む。成長産業クラスター室の構想が持ち上がったのは2010年春。
排出権ビジネスを進めながら、工藤はプロジェクトチームに参加する。そして昨年4月、環境ソリューション室と統合する形で、クラスター室が立ち上がった。
クラスター室は”部門横断型”であることが特徴だ。基本的に銀行は、部門ごとの縦割り組織。法人営業部は地域ごと、大企業を顧客とする本店営業部は業種ごとに分けられている。
一方で、成長分野は業種を超えた連携が必要な場合が多い。たとえば水ビジネスでは膜メーカー、プラントメーカー、地方自治体など参入プレイヤーが多岐にわたる。融資をする銀行側も、部門を超えた対応が必要になる。クラスター室では国内外や部門をまたがり情報を集約し、案件を組成する。
工藤が意識したのが、他部門と「ギブ&テーク」の関係を築くことだ。他部門からの情報には、しっかりとフィードバックする。さらにクラスター室では、他部門では目の届かない案件や企業の動向もウォッチしておく。他部門と双方向の関係がなければ、本当の意味で組織の壁を越えることはできない。
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