大戸屋、創業家が明かす"乗っ取り"の全内幕

沈黙を破って「不信の起点」を語った

智仁がメインバンクである三菱UFJ信託銀行に確認すると、河合が発言した内容は事実無根だったという。にもかかわらず、会社側は11月6日に臨時株主総会の開催を撤回。さらに「意思決定のスピードアップ、組織のフラット化を図るため」(窪田)という理由で、河合が提示した文書の通り、智仁は常務からただの取締役へと降格した。

こうした経緯について会社側は「功労金の金額も含めて検討していたのは事実。実際には、8億円も支給する余裕はないことを今年になって創業家に伝えた。河合は当初から、一貫して支給すべきと主張している。金融機関は功労金を出せとも出すなとも明確に表明していない」とする。

その後、創業家と会社は冷戦状態となる。智仁によれば、「窪田社長は、(降格を命じた)昨年11月6日以降、今年5月7日に面談するまで、目も合わせてもらえなくなった。河合さんからも連絡が途絶えた」という。

河合はその後、相談役から相談役兼最高顧問に就任、一方で智仁は2月24日に取締役を辞任し、会社を去った。3月に、三枝子と智仁はそれぞれ13.15%、5.64%の株式を相続。功労金が得られなかったことで、三枝子の株式を担保に資金を借り入れ、相続税を支払った。

撤回された合意文書

創業家と会社が4月26日付で合意した文書。関係者全員の署名がある(撮影:尾形文繁)

3月、河合は創業家に連絡をとった。智仁を始め、久実の長兄である智文、次兄の教雄へ「智仁が大戸屋と縁を切ってはいけない」という趣旨だ 。一部の親族には「会社側に(持ち株を)売却してはどうか」という打診もあったという。

4月に入り、この3人に三枝子を加えた創業家4人は河合と数回の面談を実施。最終的に、同月26日、両者で合意した条件を書面にした文書を交わした。

東洋経済が入手した文書には「智仁氏が2年後に取締役に復帰できるよう、今後、窪田、創業家、河合にて詰めていく」「1年後に功労金を支給できるよう努める」という創業家の意向が目につく。一方で「河合氏を取締役に推薦する」「創業家の議決権行使書を会社側に渡すこと」といった条件も並んでいた。

創業家の面々は「智仁の2年後の取締役復帰と1年後の功労金支給はなんとかするので、私を取締役に入れてほしい」と河合が発言したとする。が、当初8億円近くを見込んでいた功労金は3分の1に減った。

この文書には、最終的に関係者全員が文書に署名した。だが、改めて文書を確認してみると、智仁の取締役復帰、功労金の支給といった話は盛り込まれていても、確約されていない。創業家側は5月16日、合意の撤回を会社に伝えた。

にもかかわらず、会社は5月18日に、株主総会の議案として、河合が取締役に復帰するなど、大半を入れ替える人事案を公表。不信が頂点に達した創業家が反対を表明したことで、対立は世間が知るところとなった。

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