大戸屋、創業家が明かす"乗っ取り"の全内幕 沈黙を破って「不信の起点」を語った
智仁によれば、河合は「智仁を育て上げることこそが大戸屋の存続する道であり、創業者(久実)の願い。周りでサポートをするべきだ」という弔辞を読み、参列者の胸を打ったという。
その後、智仁を始めとする創業家は河合との対立を深めていく。智仁は一連の騒動について「これお家騒動ではない、会社の乗っ取りだ」として、その主犯として河合を名指しで批判する。「事実ではないことを理由に経営に介入した」(智仁)と見るからだ。
8月3日に智仁は、葬儀の礼を伝えようと社長の窪田のもとを訪れた。返ってきたのは、海外事業本部長の智仁に対して「10月1日から香港への赴任を命ず」という辞令だった。
智仁はその頃から「何かがおかしい」と感じるようになった。窪田と久実は、年齢が13歳離れてはいるが、母親が姉妹という、れっきとした従兄弟同士。「にもかかわらず、窪田は1度も線香をあげにきたことがない」(智仁)。
業務面でも引き継ぎがされていないことに業を煮やした智仁は、8月下旬、酒席の場で窪田に「なぜ引き継ぎをしてくれないのか」と迫った。智仁によると、窪田は「お前にできるわけがないだろう」と答えたという。
一方の窪田は、創業家との行き違いについて「何か具体的なものがあったかと言われると、はっきりしたものはない」と言う。
宙に浮いた、巨額の功労金
智仁と窪田の関係が緊張感を増す中、会社は粛々と、功労金の支払いの準備を進めていた。東洋経済が入手した文書によれば8.7億円の支払いが水面下で固められている。
会社側は9月14日に、臨時株主総会開催の基準日設定公告を発表し、年内の総会開催を決めている。功労金支給を決定するためには株主に諮る必要があるからだ。
ところが、この臨時株主総会は突如撤回される。それまで滅多に出社しない相談役の河合が、この頃から頻繁に会社へ出社するようになった。そして「さまざまな介入を始めた」(智仁)
智仁によれば、河合が「メインバンクの三菱UFJ信託銀行が功労金は出すべきではないと言っている」「海外の子会社や、国内の植物工場など、”久実会長の負の遺産”が多いため、銀行は資金の引き揚げを検討している」と発言したという。さらに河合は、智仁の今後10年にわたるキャリアプランと役職を示した文書を作成。署名を求めた。
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