ソニーさえ撤退に追い込んだ電池事業の苦境 今や自動車が主戦場、日本メーカーは岐路に

拡大
縮小

一方の村田製作所は、これまでリチウムイオン電池の開発を行っており、「製品の評価は高かったが、実績がない点が厳しかった」(竹村善人上席執行役)という。そのため、ソニーの電池事業を足掛かりに事業を拡大したい考えだ。

今後は世界シェア首位を誇るコンデンサー(蓄電や放電をする電子部品)や高周波フィルターの販路を活用し、スマホ向け電池のテコ入れを図るほか、産業用ロボットなど工場向けや家庭用蓄電池を強化する。

市場を切り開いたソニーが去るリチウム電池市場だが、残るプレイヤーも厳しい戦いを強いられている。

体力勝負のタフな市場

リチウムイオン市場は、首位サムスンSDI、2位パナソニック、3位LG化学の3強が世界シェア6割を占める。ただ、2015年度の各社の電池事業の業績は、サムスンSDIが赤字、パナソニック、LG化学も営業利益率0.1%以下という惨憺たる状況だ。

スマホなどに搭載されているソニーのリチウムイオン電池

背景には、ノートPCやスマホ向け電池の需要が鈍化する中、成長が見込める車載用電池での生き残りをかけ、各社とも研究開発費がかさんでいることがある。

車載用リチウムイオン電池市場では、米西海岸の電気自動車ベンチャーであるテスラ・モーターズに独占供給を行うパナソニックが一歩リードしているものの、韓国勢もテスラへの供給に関心を示しており、その地位がいつまで続くかは不透明だ。また、事業を買収する村田製作所も長期的には車載用電池の開発を狙っており、熾烈な戦いが予想される。

主戦場がスマホから電気自動車へとシフトし、新たなステージに入ったリチウムイオン市場。日本勢は今度こそ世界をリードする存在になれるのか。投資がかさむビジネスだけに、待ち受けているのは体力勝負のタフな戦いだ。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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