では、その格差を生みだした要因は何だったのでしょうか?
近年、企業はIT化やオフショアリング(業務の一部を海外移管すること)といった効率化を進めており、その中で、採用を抑制しながら業績拡大させることも可能ではないか、という意識を持ちつつあります。
こうした意識から「とりあえず内定」という採用をしなくなりました。もちろん、人材確保のため採用予定数よりも多めに内定を出すことは多いですが、採用数に満たなくても求める人材レベルは下げないと回答した会社が約7割。さらに予定数に満たなくても「致し方ない」とした企業が半数以上あるのです(リクルートキャリア調べ)。ある金融機関の人事部長は
「採用活動で何としても採りたいと思う学生に遭遇するのは、数%程度の確率でしかない」
と語ってくれました。ちなみにその会社では、人事部長面接を通過する学生は約1割とのこと。人事部長面接まで3回の選考過程で絞り込みが行われているにも関わらずの狭き門です。それだけ、採用基準が厳しくなっているのです。
かつて同様の求人倍率であった時期、多くの企業で採用基準が甘くなり、「とりあえず内定」を連発。ところが現場に配属すると退職者が続出。あるいは職場環境に不満を口にする困った存在になり「採用したことに後悔」し、トラウマになっている会社が多くあります。このトラウマを生かして採用基準を下げなくなったのです。とすれば、景気が減速して、若手社員に充足感が出てくれば採用基準は過去にないくらいの厳しさになることが想定できます。結果として、内定格差はさらに広がるのではないかと思えてなりません。
若者の側にも要因がある
また、若者の側にも要因はあるでしょう。昨今の若者は通信手段の発達もあって、普段のコミュニケーションを、メールなど非対面で行うことが格段に多くなっています。ですから、面接で行われるような口頭でのコミュニケーションを苦手とする人が増えていると指摘されることが少なくありません。
こうしたことから、企業の人事担当者からは、面接の際に質問の意図を十分に理解できず、的外れな回答する学生が増えたといった話をよく聞きます。
たとえば、「志望動機を教えて下さい」「他にはどのような業界を受けていますか」「具体的に取り組みたい仕事について教えて下さい」と事前に回答も準備しておける想定内の質問は問題ないのですが、想定外の質問を受けたときの返答に窮するシーンがよくあるようです。
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