「就活格差」は一体どこから生まれるのか? 企業が学生を見る目は厳しくなっている

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質問の意図を理解することができるかを面接官は見ています。ある学生に聞いたところ面接官に「好きな食べ物は?」と仕事に関係ないことや「何のために生きているのか」と哲学的に思える質問をされたようですが、想定外の質問だったので回答準備がなかったとのこと。仕方なく「特にありません」と回答すると、次の選考に進めなかったそうです。

その学生は「よく意図がわからない質問のせいで不本意な結果になり、納得できない」と語っていました。実はその会社が第一希望で、しかも同じ大学に内定した友人がいたので、

「自分は就活で大きく差をつけられてしまった」

と感じてしまったようです。

そのきっかけとして、想定外の質問に対する回答は影響したのでしょうか? おそらく、内定者を決める要因の1つになっていたはずです。面接官は好きな食べ物がカレーなのかラーメンなのかで合否を決めたいのではなく、自分の言葉で価値観を伝えられる主体性を試していたのではないでしょうか。

主体性とは自分の意志・判断で行動しようとする態度のことですが、ビジネスをするうえでもっとも重要な資質の1つがそれと考える企業は少なくありません。経団連の調査でも、採用選考にあたって重視した要素の上位5つに主体性は入っており、そう回答する企業の比率は年々上がっています。

大学側も「大学生の主体的学び」を掲げている

また、学士課程教育の質的転換を目指す大学側も、中央教育審議会(大学分科会)の中心テーマに「大学生の主体的学び」を掲げています。まさに、主体性は企業が求める重要な資質であることを認識しているから。つまり、大学も企業も学生が主体性を高めることが重要である……という共通認識で一致しているのです。

こうしたこともあって、学生が調べ、発表する演習形式のアクティブラーニング型の授業の重要性が叫ばれていますが、実情はというと、教員が知識・技術を教える従来型の講義形式の授業が多いほうがよいとする学生の割合が83.3%と圧倒的に高くなっています(ベネッセ調べ)。受け身の勉強スタイルが強まってきているようです。もしそうした受け身のまま採用試験を受けたなら、企業側に採用したいとはなかなか思われないかもしれません。

ならば、新たな面接対策として「主体性をアピールする」準備しておけばいいのでしょうか? そうではなく、やはり、行動全般を主体的に変える必要があります。すべての質問に対して意図を理解して、自分の言葉で語る意識をもってほしいのです。そうなれば、質問に想定内と想定外はなくなります。結果的に、企業に選ばれやすくなる可能性もあるでしょう。

企業に定年後も65歳まで希望者全員の雇用を義務付ける法律が施行されました。外国人の採用が広がり、育児休業制度などの充実で、子どもができても働き続ける女性も増えていきます。歓迎すべき雇用環境の変化ですが、そのぶん、新卒採用の枠は狭まる可能性があります。企業に入ってからのことを考えても、主体性のある行動を学生時代に身に付けておくことは、きっとますます重要なことになるでしょう。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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