三菱自動車「ミラージュ」の誤算 「リコール問題」以前から国内販売に漂う暗雲
そもそも、三菱自にとってミラージュは、国内市場でのヒットを至上命題とはしていない。日本に先駆けて12年3月にタイで販売を開始。東南アジア諸国やオーストラリア、欧州など世界150カ国程度まで販売地域を広げる計画だ。日本市場はそのうちの一つに過ぎない。
生産地をタイに選んだ狙いは、低価格を実現するためだ。人件費の安さに加え、一定以上の燃費基準を達成した自動車メーカーには、8年間法人税が免除される政策もある。そして低価格を追求したワケは、今後の成長が見込める新興国での競争力を確保するためである。
目の肥えた日本の消費者向けに新車を開発すると、「まずはとにかく安い車でもいいから欲しい」新興国の需要になじまない場合がある。三菱自はミラージュの開発の力点をあくまで新興国に置いた。三菱自にとってはむしろ、リコール隠し問題をはじめ、過去の相次ぐ不祥事をきっかけにブランド力が低下したうえ、世界にも通用する強豪がひしめく日本で真っ向勝負するよりも、新興国を開拓したほうが合理的という判断なのだろう。
正真正銘の正念場
三菱自の世界販売にとっては、ミラージュが国内で目算どおりに売れなければ、タイから日本への供給を減らし、その分を新興国へと振り向けるという戦略は採れる。
それでも、国内販売にとって待望だった独自開発の新型車が苦戦している事実は痛い。三菱自は13年1月にはSUV(スポーツ多目的車)「アウトランダー」をベースに、同社初となるプラグインハイブリッド車(PHV)を発売。13年夏には日産自動車と共同開発した軽自動車を国内市場に投入する予定だが、台数を底上げするはずだったミラージュのアテが外れたうえに、リコール問題によるブランドの低下で、ますます地合いは悪くなっている。三菱自の国内販売は、正真正銘の正念場を迎えている。
(撮影:今井 康一)
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