三菱自動車「ミラージュ」の誤算 「リコール問題」以前から国内販売に漂う暗雲

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国内市場では決算が近づく3月末にかけて、一般的に販売台数は増える傾向があるが、これまでの実績を踏まえると、1.5倍以上に膨らむとは考えにくい。「正直、当初3万台の目標は厳しいといわざるを得ない」。三菱自の黒井義弘常務執行役員は、13年2月上旬に開かれた第3四半期決算の記者会見で認めている。三菱自の国内販売全体の目算も狂っているはずである。

ミラージュはなぜ苦戦しているのか。その理由は、「先進国における環境対応車」と「新興国におけるエントリーカー」という二足のわらじを履かせようとした点にある。

タイで生産する「逆輸入車」

ミラージュはタイで全量を生産。日本に「逆輸入」されている車だ。ウリは低燃費。車体の軽量化や空気抵抗の軽減などによって、普通乗用車カテゴリのガソリン車でありながら、燃費性能は27.2km/リットルを達成した。カタログ値で見れば、ホンダの主力車種のハイブリッド車(HV)である「フィットハイブリッド」の26.4km/リットルと同等である。そして、もう一つのウリが低価格。日本では最廉価版の車両本体価格が99.8万円と100万円を切る。

だが、日本の新車市場は世界でも指折りの激戦区だ。目の肥えた日本の消費者に受け入れられるには、コンパクトカーであっても高い品質と性能が求められる。大人気を博しているトヨタのHV「アクア」の燃費は、35km/リットル以上。搭載エンジンは1500ccのため、ミラージュと単純に競合するワケではないが、車両本体価格は最安で169万円もの値が付くのに、月販2万台前後で飛ぶように売れている。

日本のような先進国で環境対応というコンセプトは今や当たり前の時代。HVだけでなく軽自動車でも燃費性能が30km/リットルを超えるモデルもあり、燃費性能では勝負できず、単なる安さだけでは武器にならない。

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