トランプ大統領でイエレン議長「クビ」の理由 歴史から学ぶ米大統領とFRB議長の関係
まず23年間この国の金融市場を見てきた限り、またそれ以前の事例を遡っても、米国の中央銀行が政治から独立していたといえる事例は少ない。その事例を紹介したいのだが、既に市場はグリーンスパン議長の前を知らない世代が主流だ。それどころか、今のプレーヤーは人工知能かもしれない。
だからわかりやすく現在から遡ると、バーナンキ、イエレンという直近の2人の議長は、過去の議長と決定的に違うところがある。それは2人が大学教授からそのままFEDに横滑りしたこと。そのため実業界での経験がないことだ。
実はそのようなFED議長は、それ以前を遡っても、ニクソンが指名したアーサー・バーンズだけだ(1970~1978)。バーンズはその後のインフレで今では最も評価の低いFRB議長。ユダヤ人であることと、ミルトン・フリードマンやアナ・シュルツを信奉していた点で、バーナンキの先輩ともいえる。
そんななか、大統領候補のトランプは、自分が大統領になったらイエレン議長を交代させるといっている。
二大政党制のしがらみは根が深い
もちろんトランプ本人の意思というより、共和党関係者には議長をそろそろ実業経験者へ回帰させたい思惑があることを代弁したのだろう。ただバーナンキやイエレンの時代一番潤ったのはビックビジネスのはず。ならなぜイエレン議長ではいけないのかというと、二大政党制のしがらみは、見た目より根が深いということにつきる。
そもそもFED議長の登竜門のCEA(経済諮問委員会)長官になった時期からして、バーナンキより7歳年長のイエレンは先に議長になる予定だったという説がある。
ところが2000年の大統領選挙で民主党のゴアがブッシュに負けてしまい予定が狂った。ビル・クリントン政権下、民主党のイエレンは、来る女性の時代、未来の議長候補としてCEA長官と理事を経験した。しかし共和党のGWブッシュ大統領になってしまい、彼女はFRB理事からサンフランシスコ連銀総裁という、一見すると異例の左遷のような人事を経験している。
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