「ウナギの管理」が今こそ強く求められる理由 絶滅危惧種を守るために日本が主導すべき

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――シラスウナギについては、取引の不透明性も指摘されています。

都府県への聞き取りによれば、無許可による採捕もあれば、知事から「特別採捕許可」を得た正規の採捕者が、指定された都府県内の出荷先以外により高い価格で販売し(注:都府県によっては産業保護のため、シラスウナギの販売先を都府県内の養鰻業者に限定し、価格も低く抑えている)、ゆえに過小報告が行われているケースも指摘されている。これをどう改善していくかは、非常に大事な課題だ。

もりやま・ひろし●1945年4月8日生まれ、鹿児島県出身。鹿児島県立日新高校卒。鹿児島市議会議員や参議院議員を経て、2004年衆議院議員当選。15年農林水産相就任(撮影:田所千代美)

私も採捕現場に何度か行ったことがあるが、夜の暗い中で、たくさんの人が採るので、なかなか正規の採捕者と無許可の者の区別がつかない。そこで今年の秋から、正規の採捕者に顔写真入りの証明書を発行したり、現場で確認をするためのワッペンや帽子などの着用を義務づけたりといった、対策を考えている。また、適正な採捕数量の報告を徹底するため、未報告者には許可の取り消しなどの処分を強化するよう、水産庁に指示をした。今年の秋の許可に向けて、しっかり対応したい。

いつまでもこういう状況が続けば、ウナギの資源にとってもよくない。許可を取った人が正しいルールに沿って採捕する、ということが大事だと思っている。

日中韓台で池入れ量削減を合意した

――ニホンウナギを採っているのは、日本だけではありません。2014年には日本・中国・韓国・台湾との間で、ニホンウナギの池入れ量(養殖に用いられる稚魚の量)を前年比2割削減することで、合意しました。ただ、有効な資源管理のためには、池入れ量の上限が高すぎるという声もあります。

4カ国・地域での合意ができたことは、非常に大きな前進だ。協力して取り組まなければ、結局は自分の首を絞めることになるので、各国・地域が資源管理の重要性を理解しないといけない。

池入れ量の上限については難しいところだ。適正な価格で消費者に届けるということも大事な政策課題であり、あまりに量を制限すると、価格が高騰する可能性がある。資源管理とのバランスの取り方を考えなければならない。

――ウナギに限らず、世界では近年、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の防止に注目が集まっています。

われわれは水産大国を目指しており、責任ある漁業国として、IUU漁業への対策を積極的に進めていく。これまでも、IUU漁獲物の輸入規制や、IUU漁船の寄港規制を行ってきた。2008年には大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)で、漁獲証明制度の導入を日本が主導した。日本はIUU漁業対策に積極的に貢献してきたと思っている。

直近では今年7月15日の閣議で、IUU漁船に積載した漁獲物が日本に水揚げされないよう、外国人漁業の規制を強化することを決めた。さらに8月に東京で行われる北太平洋漁業委員会(NPFC)では、IUU漁船のリストの策定に向けて議論を主導するつもりだ。われわれも非常に関心を持って、実効性のあるものにする努力をしている。

――水産資源の管理についても、日本が国際的なリーダーシップを取っていくべきでは。

これまでいくらでも獲れていた魚が、簡単には獲れなくなってきた。(太平洋クロマグロやサンマなど)国際的に管理をしている魚に関しては、まず国際的な枠組みで科学的根拠に基づいた適正な資源管理の方針を決め、それから各国がその内容をしっかりと守っていくことが大事だ。日本はその先頭に立って頑張りたいと考えている。

たとえば、太平洋クロマグロは中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)において、未成魚の漁獲量を2002~2004年の水準から半減させ、成魚の漁獲量も増やさないという合意をしている。まずは日本がこの規制をしっかり守ってみせる必要がある。

今年の8~9月には福岡でWCPFCの北小委員会が開かれる。最新の資源評価の結果をふまえて、現在の措置を見直したり、今後の対応を議論したりすることができるはず。一度(規制を)決めてそれで終わり、というのではなく、何度も見直していくことが大事だ。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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