能年玲奈「改名」で見えた焦りとかすかな希望 「洗脳」は本当にあった?なぜ「のん」に改名?

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その一方、フォローをするわけではないのですが、“いち取材者”という中立な立場から書かせていただくと、能年さんの所属事務所は対応が丁寧で、外部の人間としては何の問題もありません。実際に人気・実力を兼ね備えたタレントが多いのも、事務所の力強い後押しがあったからでしょう。

しかし、そんなすばらしい所属事務所が怒り、能年さんもつらかったという事実があります。

どの業界にも雇用に関するトラブルが絶えないように、能年さんと所属事務所の間にも、何かしらボタンのかけちがいがあって、そこから不信感が募り、実際以上にこじれてしまったような気がしてなりません。当然お互いの言い分はあるでしょうが、裏を返せば、双方に正しいところと、至らないところの両面があったからこそ、ここまで大きな問題になってしまったのではないでしょうか。

これらは人間のやることであり、大金が動く仕事上では、よく起こりうること。それを承知で敢えて言わせていただくとしたら、能年さんはまだ20代に入ったばかりの若い女性だけに、仮に間違いを犯していたとしても、事務所だけでなく社会全体が大目に見てあげる寛容さがあってもいい気がします。

会社や業界の「大いなるプライド」と、若い社員の「ちょっとしたわがまま」。もしこの騒動がそういうことから始まったのなら、若い社員を許してあげることで、「長い人生をかけて恩返しをしてくれる」のかもしれないのですから。

驚くべきフットワークの良さを武器に

能年さんは、小学3年生で芸人を目指してトリオを組み、その後イラストに目覚めつつも、小学6年生でバンドを結成してヴォーカルになり、中学1年生でギターをはじめ、中学2年生で『二コラ』のモデルをはじめ、中学3年で女優に憧れ、卒業後に上京。「昔から目立ちたいという気持ちがあったんです」と話すように、やりたいものを見つけたらすぐにはじめるフットワークのよさがあり、今後の芸能活動における武器となるでしょう。

それだけに、身動きの取れない今回の空白期間は「さぞつらかったのでは」と想像できますが、その間にもクラシックバレエを習いはじめたように、これからも年齢を重ねるほど重層的なスキルを身に付けていくことが予想されます。ゆくゆくはマルチクリエイターになるかもしれませんし、「日本から飛び出して海外へ」なんてことになっても驚きません。

現在放送中の「しくじり先生」(テレビ朝日系)が笑いを盛り込んだ演出で好評のように、人生のしくじりは笑いと紙一重。今回の件で、小泉今日子さんが絶賛したコメディエンヌとしての才能がさらに開花したのではないか……その演技を見たいのは私だけではないでしょう。

私がお会いした能年さんのイメージは、「ボーッとしているように見えて繊細」で、「引っ込み思案に見えてパワフル」で、「人見知りに見えて人なつっこい」。ルックスやキャラクターは異なりますが、大竹しのぶさんと会ったときに感じた、つかみどころのなさと親近感は似ているものがありました。そんな彼女なら、「かんぽ生命保険」のCMで口にした「人生は、夢だらけ」、このフレーズを今後の芸能活動で証明するような気がしてならないのです。
 

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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