企業が革新を持続するための5つの行動指針 「イノベーション100委員会」の提言とは?

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また、これらの創造的な活動については、顧客や世の中に提供する「価値」が重要になります。会社の技術や資源からプッシュするのではなく、顧客のニーズをプルし、価値を創造しようという考え方です。

そして、具体的な行動として、社員が挑戦できる仕組みをつくる。また、組織の壁を超えて外部と連携する仕組みをつくる。この際に、経営者が陣頭に立って、明確に既存事業と異なる基準の制度を作るべきと指摘しています。

経営者への100の質問

さらに、イノベーション100委員会の報告書では、この行動指針を具体的な行動につなげるべく、参加企業である電通の未来創造グループの協力により、「行動のための100の質問」を掲載しています。100問というと多い気もしますが、たたみ掛けるような質問に答える過程で見えてくるものもあるはずです。ぜひ、経営者や経営幹部の方にお答えいただきたいと思っています。

<行動のための100の質問の例>

・最近、あなたはいつ「将来」について議論しましたか?
・あなたは今起きている「社会変化」を、自分の言葉で語ることができますか?
・あなたは「短期的な業績」にもっとも時間を費やしていませんか?
・あなたは常に「価値起点」で考えられていると思いますか?
・あなたが社員に「発信し続けていること」は何ですか?
・あなたの会社には「試行錯誤」が存在しますか?
・あなたの会社には試行錯誤を「支援する環境」がありますか?
・新しい「事業機会」を最も捕まえている社員・役員は誰ですか?
・積極的に社外の「知恵や考え方、技術」を活用している社員や部署がありますか?
・あなたが本質的な「価値」を生み出すためにやるべきことは何ですか?

 

イノベーション100委員会は、初年度17社で走り始めましたが、現在、参加メンバーを増やしています。新しい取り組みをされている企業の方々にはぜひ御参加いただき、イノベーション促進の輪を拡大していただければと思います。「大企業病」は大企業だけの病ではなく、全ての企業に関係します。

この取り組みを拡大し、大企業だけではなく、中堅・中小企業も含めて、「新しい価値」を生み出すための「想い」や「方法」が共有されるべきと考えています。先駆的な取り組みをする企業が増えて、ベンチャーとの連携も進み、日本においてイノベーションのクリティカルマスが形成されることを期待しています。

石井 芳明 経済産業省 新規事業調整官

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いしい よしあき / Yoshiaki Ishii

経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官。1965年生まれ。1987年、岡山大学法学部法学科卒業。1996年、カリフォルニア大学バークレー校 留学(公共政策 単位履修生)。2000年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科卒業(国際経営学修士)。2012年、早稲田大学大学院商学研究科卒業(商学博士)。1987年、通商産業省(現・経済産業省)入省。中小企業・ベンチャー企業政策、産業技術政策、地域振興政策等に従事。1997年、同省工業技術院国際研究協力課、2000年、中小企業庁経営支援課、2003年、経済産業政策局産業組織課、2006年、中小企業基盤整備機構資金支援課、2007年、同ファンド企画課、2008年、大田区産業経済部産業振興課課長、2011年、地域経済産業グループ地域経済産業政策課を経て、2012年から現職。

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