衆院解散狙う安倍政権が直面するジレンマ

経済で"改革"必要だが、支持団体は反発

その後、政治日程は年末の予算編成、2017年の通常国会と続くが、安倍政権の行方を大きく左右するのは、何といっても経済の動向だ。

英国のEU(欧州連合)離脱決定、米国の利上げ、中国経済の不振など国際経済は不安定さを増している。日本経済も先行きが見通せていない。安倍首相は「アベノミクスのエンジンをさらに吹かしていく」というが、そのアベノミクス自体、行き詰まっているのが現実だ。

第一の矢の金融緩和はマイナス金利にまで踏み込んだが、「空吹かし」状態。日銀による国債買い入れも限界が見えている。第二の矢の財政出動が繰り返されているが、公共事業拡大による景気回復には限度がある。第三の矢の成長戦略は、何度もプランが発表されてきたが、いまひとつパンチがない。年金、医療など社会保障の抜本改革が求められるが、遅々として進まないのが現状だ。

最も必要な社会保障改革には強い抵抗

政府内には「衆参両院で与党が圧倒多数を占め、安定政権となったのだから、社会保障の思い切った改革に踏み出してほしい」(経済官庁の局長)という声がある。具体的には、医療費の個人負担を増額することや、厚生年金の対象を非正規労働者にまで拡大することなどだ。

だが、これには強い抵抗が予想される。現在、原則として70-74歳が2割、75歳以上が1割となっている医療費の個人負担を70歳未満と同じように3割に改めるような改革に踏み込めば、高齢者の猛烈な反発が必至。医師団体の抵抗も避けられない。厚生年金の対象拡大には、会社側の負担が増える中小企業の反対が強まるだろう。

医師団体や中小企業は、自民党の選挙を支える勢力でもあり、安倍首相としては「改革は進めなければならないが、自民党支持団体の反発は避けたい」というジレンマに直面しているのである。

安倍首相は自民党の総裁任期切れを見据えて、次の衆院解散・総選挙のタイミングを探している。総選挙でふたたび勝利して、総裁任期の延長につなげたいという思惑が首相周辺から聞こえてくる。ただ、前回総選挙(2014年12月)で自民党は大勝しており、大幅な議席増は考えにくい。まして、野党側で民進、共産両党の選挙協力が進めば、選挙情勢は自民党にとって有利とはいえなくなる。

そうした厳しい総選挙になることを考えれば、支持団体の嫌がるような改革には動きにくい。反面、改革を進めなければ、日本経済への評価が下がり、株価は低迷する。日本経済の再生も遠のくという難点がある。

参院選を勝利で飾り、念願だった参院での自民党単独過半数、改憲勢力3分の2を確保したのも、つかの間、安倍首相には経済再生の実行という重い課題がのしかかっている。政権の先行きには、いばらの道が待っている。
 

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