衆院解散狙う安倍政権が直面するジレンマ 経済で"改革"必要だが、支持団体は反発
参院選を終えた安倍晋三首相の表情には、安堵感が漂っていた。目標の与党過半数どころか、改憲勢力で3分の2を占めることができたのだから、当然だろう。ただ、時には記者団からの質問にいら立ちを見せる場面もあった。これから先の政権運営を思えば、前途多難であることは目に見えている。どんな政策目標を掲げ、何を推進力とするのか。これといった当てがない。政治・経済情勢が混沌とする中、改革の方向を示さなければ、政権は失速する。勝利の美酒に酔っている暇はないのである。
今後の政治日程を見てみよう。
7月31日には、東京都知事選が投開票される。自民党は小池百合子氏と増田寛也氏とに事実上、分裂。野党統一候補の鳥越俊太郎氏の支持がどこまで広がるかが注目点だ。
約50年前のこと、当時の自民党・佐藤栄作政権は、長期政権をうかがう勢いだった。しかし、物価高や環境問題などで市民生活は脅かされていた。その時の都知事選で登場したのが、当時の社会党と共産党に推された美濃部亮吉氏だった。経済学者としての知名度もあり、自民党が推す候補を接戦の末に破って、初当選した。美濃部氏のキャッチフレーズが「ストップ・ザ・サトウ」だった。
「憲法改正阻止を訴える鳥越氏が『ストップ・ジ・アベ』を掲げて当選すれば、政治の潮目が変わる」と民進党幹部は期待を寄せている。
内閣改造では岸田氏、石破氏の動向に注目
8月3日には、自民党役員人事・内閣改造が予定されている。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、谷垣禎一幹事長らの処遇が焦点だ。
さらに、3年半、外相を務めてきた岸田文雄氏の去就が注目されている。岸田氏は、自民党ハト派の宏池会の会長。派閥内には、2018年9月の自民党総裁選に向けて準備に動き出すため、閣僚を辞退すべきだという意見が多い。同じ総裁候補の石破茂・地方創生相も閣内から出て、総裁選に目標を絞る動きを見せている。党役員・閣僚人事で次期総裁候補がはずれれば、自民党内のバランスが崩れて政権運営に支障が出てくる可能性がある。
9月からの臨時国会も波乱含みだ。景気対策のための大型補正予算案やTPP(環太平洋経済連携協定)の関連法案、さらに消費増税延期のための法律改正などが立て込んでいる。新たに任命される閣僚のスキャンダルなどで政権が立ち往生する場面も予想される。
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