会議の冒頭、同会議の座長に就任した荻上紘一前大妻女子大学長は、「学校の単位として認定されているインターンシップへの参加学生の割合が少ない」と切り出した。就職ナビ会社の調査では、参加学生は多くなっているが、そのほとんどが1~2日の短期型だ。会議の席上では大学の単位認定の条件となる週単位、1カ月単位のプログラムが少ないとの指摘が出された。さらには中小企業の人材確保、地方創成への活用などが意見として出され、今後、そうしたテーマが議論されていくと思われる。
しかし、この会議には別な目的がある。それは、インターンシップを通じた採用活動の解禁だ。
規制改革の俎上にあがる
今年5月に内閣府に設置されている規制改革会議が、「規制改革に関する第4次答申」をとりまとめ、安倍首相に提出した。答申の「就職・転職が安心してできる仕組みづくり」の項目に盛り込まれていたのが、「インターンシップ活用の推進」だ。具体的にはインターンシップで取得した学生情報を、学生が希望すれば使用できるようにし、また中小企業に対しては人材確保に活用できる仕組みの方策を講ずるよう求めている。
現在、就職活動の解禁日(3年生の3月以前)より前に、インターンシップを経由した選考活動を行ってはならないというルールになっている。大手企業など約1300社が加入する経団連は「採用に関する指針」など、就職活動に関する取り決めを策定しているが、インターンシップを社会貢献活動の一環と位置づけ、採用選考活動とは一線を画するべきとの立場を取る。そして5日以上実施するものをインターンシップと呼ぶべきだとしている。
さらに政府の方針もそれを追随する形になっている。文部科学省や厚生労働省、経済産業省の3省は「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」という基本的な認識や方策をまとめた文書を策定している。2014年にその内容を17年ぶりに改訂したが、ここでもインターンシップを通して取得した学生情報を広報活動や採用活動に使用してはならないと明示している。これは、経団連加盟企業だけではなく、中小企業などすべての企業が対象だ。
罰則規定などはないものの、このルールに対し企業からの不満は多い。中小企業からは「インターンシップを受け入れるだけでも大変。採用に結びつくような形にしてほしい」という声があがる。ある大手企業の人事担当者も「採用に直結しない形で実施しているが、社会貢献だけでは社内の理解を得るのが難しい」とこぼす。企業にとっては費用や対応する社員の確保など、インターンシップを受け入れる負担はけっこう重いというのが実情だ。
こうした声や企業と学生のマッチングを促す意味で、規制改革会議の答申では、インターンシップで得た学生の情報を採用に利用できるよう促しており、答申を受けて政府が6月に発表した規制改革実施計画でも関係各省に検討を行うよう求めている。仮に採用への利用が解禁となれば、再来年の2019年卒採用から適用される可能性がある。
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